「すまない。待たせた」


 麗華さんが去った直後、蒼真さんがわたしのところへ戻ってくると、隣の席に腰を下ろし、わたしの目の前にお皿を差し出した。

 お皿の上には、一口サイズのスイーツが三つ載っている。

 小さなショートケーキに、かわいらしいマンゴーのタルトレット、それにプチシュー。


「ずっと陽介とともに挨拶回りをしているようだったから、まだなにも食べていないんじゃないかと思ったんだが」

「これ……いただいてもよろしいのですか?」

「彩智のために取ってきたものだ。苦手なものがなければいいが」

「どれも大好きです。ありがとうございます」


 と、そのとき——。


 ぐぅ~~~~。


「……」

「あ、あのっ、蒼真さんも、よかったらおひとついかがですか?」

「俺は甘いものはあまり好きじゃない」


 以前四人でティーラウンジに行ったときのことを思い出して、ハッとする。


「そ、そうでしたね! 失礼いたしました」


 でも、今のお腹の音は、蒼真さんのですよね?

 わたしだけいただくというのも気が引けて、思わずしゅんとしてしまう。


「——だが、シュークリームだけは好物だ」

 そう言うと、すっとお皿の上のプチシューをつまみ、口の中へと放り込んだ。


「うまいな」

 蒼真さんの心からの声に、ふふっと笑みが零れる。


「……笑うな」

 蒼真さんが、むすっとした顔をわたしから逸らした。