結局誰にも相談することができないまま、季節はあっという間に移り変わり、五十周年記念パーティー当日がやってきた。
今日のパーティーには、わたしも出席予定。
繊細な刺繍の施されたレースのトップスに、シフォン生地のロングスカートを組み合わせた淡いピンク色のドレス。
三つ編みにした髪をアップにし、アクセントに小花と宝石の散りばめられたバレッタを留めている。
「とてもステキだよ、彩智。どこの国のお姫様かと思った」
一瞬驚いたように目を見開いたお兄様が、すっと目を細めてわたしを見る。
お兄様は、いつものスーツよりも改まったタキシード姿。
黒のジャケットに、シルバーのベストと同色のアスコットタイを身につけている。
所用を終わらせてから会場に向かうというお父様とは別行動。
わたしはお兄様と一緒に、パーティー会場となっている御門ホールディングスの所有するホテルへと、里見さんの運転する車で向かった。



