学園最強の兄は妹を溺愛する

 ところで、わたしたちがなぜこんなヤンキー校に入学することになったのかっていうことなんだけど。


 お兄様が中学三年生の秋のこと。

 いつもお忙しく、わたしたちと食事をともにすることのほとんどないお父様が、あの日は珍しく夕食の時間にダイニングルームにいらっしゃったの。


「陽介。おまえは、この高校へ行きなさい」


 大股でお兄様のところまで歩いていったお父様が、テーブルの傍らに高校のパンフレットを置いた。


 当時県内最難関校と言われる中高一貫校の中等部に通っていたお兄様は、成績優秀で先生からの信頼も厚く、本当はそのまま高等部に進学することがすでに決まっていたの。


「ここは……」

 テーブルの上のパンフレットを見た瞬間、お兄様が眉をひそめる。

「そうだ。うちの社が出資している私立流星学園。おまえも名前くらいは聞いたことがあるだろう。悪い意味でな。あまりの荒れように、すでに教員には手の打ちようもないような状況とのことだ。この学園を、三年でまともな学園に生まれ変わらせろ。それを、おまえをわたしの跡取りに指名する、最後の試験とする」


 そのパンフレットに目を落とし、じっと見つめていたお兄様がゆっくりと顔を上げると、お父様を真正面から見据えた。


「わかりました。——ですが、ひとつお願いがあります」

「なんだ? 言ってみなさい」

「もしこの学園を一年で生まれ変わらせることができたら——一年後、彩智もこの学園に入学させてください」

「なっ……」


 お兄様の申し出に、お父様は絶句した。