伊集院さん——麗華さんとともにやってきたのは、麗華さんのご自宅。

 広い日本庭園のような和風のお庭を車に乗ったまましばらく進んでいくと、黒々と美しく輝く瓦屋根の豪邸が目の前に現れた。


 床の間に立派な掛け軸の飾られた和室の応接室に通され、しばらくすると、海苔のような独特な香りのする青緑色の緑茶と、繊細な細工の施された練り切りが運ばれてきた。


「いずれ義姉妹となるのですものね。彩智さんとも仲よくさせていただきたいと思って、今日はお誘いしたの」

「……お誘いいただき、ありがとうございます」

 一生懸命自然な笑顔を返そうとしても、なんだかぎこちない笑みにしかならない。


「陽介さんとは、中学時代、同じ教室で学んでおりましたの。なのに、陽介さんは別の高校に進まれてしまって、わたくし、とても寂しくて……。それで、先日陽介さんの学校に忍び込んでしまいましたのよ」

 ふふっといたずらっぽく麗華さんが笑う。


 きっと、わたしが目撃したときのことに違いない。


「そうしたら陽介さん、とても慌てた顔をなさって、『ここは危ないから、君は来てはいけない。すぐに帰りなさい』っておっしゃって、自宅まで送ってくださったの。中学の頃からお優しいところはまったく変わっていらっしゃらなくて、とても安心しましたわ」

「そうだったのですね」

「親の決めた結婚ですけど、わたくし、心から陽介さんのことを愛しているの」

 麗華さんが、わたしの顔を真正面からじっと見つめてくる。


 その強い視線に耐えきれず、わたしはすっと目を伏せた。


「お兄様のこと、よろしくお願いいたします」