学園最強の兄は妹を溺愛する

「……おめでとうございます、お兄様。これから、ますますがんばらなくてはですね」

 お兄様に向かってなんとか笑顔を浮かべて見せると、すっと立ち上がり、わたしはそのままダイニングルームをあとにした。


 とてもじゃないけれど、食べ物が喉を通らない。


 今までみたいにお兄様に助けてもらうばかりではダメだって思ったけれど。

 お兄様に安心していただくためにも、もっと自立した人間にならなくてはと思ったけれど。


 それは、今すぐじゃないって思ってた。


 伊集院さんって、この前学校に来ていた方?

 うしろ姿しか見ていないけれど、よくお手入れされたキレイな長い黒髪で、背筋がスッと伸びた凛とした立ち居振る舞いの方だった。


 ぱたん。

 小さく音を立てて、自室の扉を閉めると、扉を背にズルズルとしゃがみ込む。

 呆然としたまま、涙も出ない。


 ……そっか。お兄様、本当に結婚なさるのね。