学園最強の兄は妹を溺愛する

 ホッと胸をなでおろしかけ、さきほどの蒼真さんの言葉をもう一度頭の中で繰り返す。


『この学園の生徒ではないが、陽介を訪ねるために、わざわざあの制服を手に入れたらしい』


 それってひょっとして、お兄様のことが好きで、この学園にまで訪ねてきたってことなのでは……?


 お兄様が、わたしの手の届かない遠くへ行ってしまうかもしれない。


 突然そんな不安が胸に渦巻き、きゅっと胸元で両手を握り締める。


 ……ううん。たとえそうだとしても、それは仕方のないこと。

 だって、わたしとお兄様は兄妹で。

 何年後かにはお兄様はどなたかと結婚して、この御門ホールディングスを守っていかなければならないんだもの。


「取り乱してしまって、すみませんでした、蒼真さん。もう大丈夫です。お兄様のこと、教えてくださって、ありがとうございました」

 なんとか笑顔を取り繕うと、わたしは自分の教室へと戻るため、二年生棟をあとにした。


 今までみたいに、お兄様に助けてもらうばかりではダメよね。

 お兄様に安心していただくためにも、もっと自立した人間にならなくては。