「あのさ、彩智。蒼真のことだけど——」

「べっ、別に蒼真さんとは、なにもありませんからっ。蒼真さんのことが心配すぎて、少し取り乱してしまいましたが、別に、特に、なにも……お兄様が心配するような関係ではありませんので」


 お兄様の言葉を途中で遮るようにしてまくし立てると、わたしは顔をうつむかせ、きゅっと両手を握り締めた。


「そう」


 ひと言短くそう言うと、お兄様は窓のところに頬杖をつき、家に帰り着くまで流れる景色を黙ったままぼーっと見つめ続けていた。