すべての想いは君とふたりで


リビングに入ると、わたしは驚いた。

広いリビングには、既に完璧に家具が揃っており、大きなL字ソファーに実家にあったテレビなんかより遥かに大きいテレビ。

部屋の角には、大きな観葉植物なんかも置かれており、モデルルームのようにお洒落な空間だった。

「ここは、父が所有してるマンションなんです。その一室をお試し同棲の為に借りました。」

所有してるマンション、、、

さすが息子が弁護士なだけあって、父親もお金持ちなんだなぁ。

「あのぉ、律樹さん。」
「はい。」
「今回の話は、、、聞いてるんですよね?」
「今回の話?婚約の件ですか?」
「はい。」
「もちろん、聞いています。」
「律樹さんは、それを聞いて承諾したんですか?」

わたしがそう訊くと、律樹さんは何の迷いも無く、「はい。」と答えた。

「おかしいと思わなかったんですか?会ったこともない人と婚約して、突然同棲ですよ?」
「父からそう言われたので、、、そうなんだなって思ったくらいで。」
「自分の意志はないんですか?」
「自分の、意志、、、。これまで、父の言われた通りに生きてきたので。」

わたしは律樹さんの言葉に唖然とした。

この人は、親の敷いたレールの上しか歩いて来なかった人なんだなぁと思った。