「さぁ、着いたぞ!」
そう言い、父が車を停めた周りの風景は、わたしが全く知らないところだった。
「ここ、どこ?」
「この左側にあるマンションが今日から花が住む家だよ!」
「はぁ?!」
父はわたしにカードキーを差し出すと、「ここの5階の502号室だから!」と言った。
「えっ?!嘘でしょ?!」
「花の荷物はもう運んであるからなぁ!」
「えっ?!えぇ?!」
父は運転席から降りてくると、わたしが乗る後部座席のドアを開け、わたしを車から降りるように促した。
「律樹くんと仲良くな!」
父はそう言うと、わたしの肩をポンッと叩き、車に乗り込むと、わたしとカードキーを残して行ってしまった。
一人残され、呆然とするわたし。
マンションを見上げてみると、なかなか立派なマンションで10階まではありそうだった。
5階の502号室?
荷物はもう運んである?
律樹くんと仲良くな?
わたしは今の現状に頭が追いつかないまま、マンションの正面玄関から入り、エントランスでカードキーを使い、中に入って行った。



