「あ、商いの約束があります」
もっともらしい言い訳。
でも、そんなことが気にかかるんじゃない。
どうして私は、こうも言えないことばかりなの。
商いがあるのも本当だけれど。
打開していないし、売らなきゃいけないものが、まだ部屋を埋め尽くしている。
それに、クリアリにこのことを相談もできないなんて、無理無理。
厳密に何時と約束はしていないけれど、ダリア服飾店に新しいデザインを持ち込んで相談もしたかった。
キリカだって、受注のこと任せっきりにできない。
「それに、私の夢なんて、信じていないのでしょう?」
だったら、私を連れていく理由にならない。
それほどに王の隠し子の存在は禁忌なの?
「信じていないと、誰が言いましたか?」
「え? だって信憑性がないって」
言ったよね? 言ってたよね?
ちらっと同意を求めてイリをみたら、イリもうなずいてくれた。
「夢なんて信じるかよ、こいつが」
「……はい」
信じてほしいなんて、私の考えが甘かった。
身も心も痛いほどわかったので、帰してください。
「見極めるための処置です」
「はぁ? お前は少しでも信じたのか?」
「少し?」
イリの言葉に、モアディさまは怪訝な顔をした。
「私は魔法師ですよ。説明できない事象を起こせる者です。何らかの力があることを否定しません」
そう言い切ったモアディさまは、凛としていて自分の職に誇りがあるのが伝わってくる。
ごめんなさい。
夢見なんて嘘をついたことが、胸を重くする。
私、この人たちを騙すんだ。
自分だけのためではないから、私だって誇っていいけど胸は痛む。
「お願いです。あなたたちにも行ってほしくない、中止…にできないならせめて別の地へ」
深く、深く、頭を下げた。
スハジャ公国じゃなければ、噴火からは逃れられるはずだから。
「無理だ」
でも、私のお願いはまたも跳ね除けられる。
「決まったことを私は覆しません。あなたには同行していただきます。私には時間の限りがありますので、強行させていただきます」
ゆっくりと、モアディさんが私に手を掲げる。
さーっと、冷たい空気が私の周りを包み始めた。
「え? 寒……えっ!?」
寒いと言うより、チリチリと空気が肌を刺す。
「お、おいっ!」
「氷の精よ、我と契約し彼女を捕縛せよ」
「え? え?」
あげられた手が、すっと降ろされる。
「よせっ!」
イリが私に駆け寄ろうとしているけど、なぜなの妙にゆっくりとしていて。
イリが私に触れる前に、それは私の身体を縛った。
「冷たっ……」
いや、冷たいより痛い!
「痛い、痛いっ」
ピキピキと、ドレスが凍り肌に張り付くのがわかった。
「モアディ! やりすぎだ!!!」
イリの声がどんどん小さくなって、私の意識はすっと落ちた。
もっともらしい言い訳。
でも、そんなことが気にかかるんじゃない。
どうして私は、こうも言えないことばかりなの。
商いがあるのも本当だけれど。
打開していないし、売らなきゃいけないものが、まだ部屋を埋め尽くしている。
それに、クリアリにこのことを相談もできないなんて、無理無理。
厳密に何時と約束はしていないけれど、ダリア服飾店に新しいデザインを持ち込んで相談もしたかった。
キリカだって、受注のこと任せっきりにできない。
「それに、私の夢なんて、信じていないのでしょう?」
だったら、私を連れていく理由にならない。
それほどに王の隠し子の存在は禁忌なの?
「信じていないと、誰が言いましたか?」
「え? だって信憑性がないって」
言ったよね? 言ってたよね?
ちらっと同意を求めてイリをみたら、イリもうなずいてくれた。
「夢なんて信じるかよ、こいつが」
「……はい」
信じてほしいなんて、私の考えが甘かった。
身も心も痛いほどわかったので、帰してください。
「見極めるための処置です」
「はぁ? お前は少しでも信じたのか?」
「少し?」
イリの言葉に、モアディさまは怪訝な顔をした。
「私は魔法師ですよ。説明できない事象を起こせる者です。何らかの力があることを否定しません」
そう言い切ったモアディさまは、凛としていて自分の職に誇りがあるのが伝わってくる。
ごめんなさい。
夢見なんて嘘をついたことが、胸を重くする。
私、この人たちを騙すんだ。
自分だけのためではないから、私だって誇っていいけど胸は痛む。
「お願いです。あなたたちにも行ってほしくない、中止…にできないならせめて別の地へ」
深く、深く、頭を下げた。
スハジャ公国じゃなければ、噴火からは逃れられるはずだから。
「無理だ」
でも、私のお願いはまたも跳ね除けられる。
「決まったことを私は覆しません。あなたには同行していただきます。私には時間の限りがありますので、強行させていただきます」
ゆっくりと、モアディさんが私に手を掲げる。
さーっと、冷たい空気が私の周りを包み始めた。
「え? 寒……えっ!?」
寒いと言うより、チリチリと空気が肌を刺す。
「お、おいっ!」
「氷の精よ、我と契約し彼女を捕縛せよ」
「え? え?」
あげられた手が、すっと降ろされる。
「よせっ!」
イリが私に駆け寄ろうとしているけど、なぜなの妙にゆっくりとしていて。
イリが私に触れる前に、それは私の身体を縛った。
「冷たっ……」
いや、冷たいより痛い!
「痛い、痛いっ」
ピキピキと、ドレスが凍り肌に張り付くのがわかった。
「モアディ! やりすぎだ!!!」
イリの声がどんどん小さくなって、私の意識はすっと落ちた。
