女神は天秤を傾ける

 目を閉じて、必死に考える。

 自然でいて、かつ不自然なもの。

 私が時間を戻っていることを覚られないように。



 私はいまは女の子(・・・)、だから。

 思春期と呼ばれるこの時期なら、多少のことは突拍子なくても大丈夫なんじゃないだろうか。

 ものすごく突っ込まれたら、それを武器にしてしまえないかしら。

 

 通じるかわからなけど。




「おい」



 考えているのに、沈黙にいらだったイリの声が邪魔する。



「黙ってて、いま説明できるように思い出してるの」



 私の邪魔をしないで、いま思いつくから。

 なにか、なにかないかな。

 ここに来るまで色々考えていたけど、出せなかった答えだから、当たり前だけどすぐ出てこない。

 だからと言って、このまま「私は能力者です」みたいな空気で目を閉じているわけにもいかない。



 あぁ、ここにクリアリがいたら天秤に縋れるのに。



 私がここで回避しないと、人が死ぬ。

 知らない人も、大切な人も。



 リーディア、私にすべてがかかってるのよ。

 私なら、できるのよ。



「リーディアはきっと大丈夫。私にはわかるの」

 そう言って、大事な時(いつも)に励ましてくれたキリカを泣かせないためにも。




 キリカ……。

 キリカの顔が浮かんだ時に、あの時キリカが持っていた本の表紙をなぜか強く思い出した。

 なぜあの本?

 面白いわよ、と私にも貸してくれた。

 深い緑に染められた皮に、金の箔押しが美しかったあの(おとぎ話)

 たしかに面白かったけれど……あ。



 キリカ、キリカ、ありがとう!

 あの本に出てきた、あれなら噴火級の災いだわ!