女神は天秤を傾ける

「どうしよう、クリアリ!」

 呼び出してすぐ、私はそう叫んだ。

『落ち着きなさい、なにごとなの?』

「ユハスさまがっ、ユハスさまがっ……」

 ちゃんと喋りたいのに、言葉がうまく並ばないし涙が込み上げてくる。

 ユハスさまが溶岩に沈む村に行く。
 ただそれを言うだけなのに、口を開くヒックヒックとしゃくりあげてしまう。

『まったく……』

 話しが進まない私は、クリアリは困らせてしまっていた。

『その顔、アーリアにそっくりね』
「うぅ……」

 泣き顔が? 焦り顔が? 親子だもの、似ているでしょうけど。
 お母さまの名前を出されて、一瞬鼻水は止まったけど。

『この手はあまり使いたくないんだけど』
「なに?」

 クリアリはクイクイと私を手招きする。
 前にかがんで近づけと言うことらしい。

『とりあえず涙を拭きなさい』

 そう言って、クリアリは自身の衣をたくし上げるとそれで私の顔をぬぐう。

 女神さま、たくましいおみ足が丸見えですよ。
 クリアリの少し粗雑な優しさに、愛情を感じた。

『失礼するわね』

 クリアリは手を伸ばして、私の額に触れる。

「な、なに?」

 触れられているところが、熱源みたいに熱くなる。

『ちょっと黙って。直に読み取るわ』
「えっ!?」
『シッー!』

 怒られて、慌てて口をつぐむ。

 読み取るって思考を? そんなことしたら、思っていること洩れてしまうってことじゃないの!?

『そうよ。だからあまりしたくないの』

 ただ考えただけなのに、クリアリに答えられてしまった。
 なんて怖い能力なの!?