「やっぱりあれは急すぎたかな」
私・雪村あかねは心のなかでそう呟きながらため息をつく。
 私は転校してきた日から仲良くしてくれる男の子、冬川葵くんに片思いしている。
 彼は転校したてで困っていた私を幾度なく助けてくれた。例えば、美味しいお店行きたいと言うと隣町のカフェに連れて行ってくれたり、買い物に行きたいが一人じゃ不安と話すと
「なら僕もついていくよ」
と言い、私の買い物に嫌な顔一つせず付き合ってくれた。そんな彼の優しさに惹かれてしまったのだ。
 しかし、今日の朝にとんでもないことをしてしまった。クリスマス空いてるかを聞いただけでなく、僕でいいのかと聞かれ
「冬川くんがいいの」と今考えると恥ずかしすぎるワードまで言ってしまった。 「恥ずかしすぎて今すぐ逃げ出したい」と思いながら、深くため息をついてると
「今日は冬川と一緒に食べてないの〜?」
とクラスメイトの藤沢(ふじさわ)華恋(かれん)が陽気に話しかけてきた。
 華恋はちょっと高めの身長で髪を短く切っているボーイッシュな女の子だ。彼女の性格はとても明るく、男女問わず人気が高い。
 そんな華恋は私の唯一の親友で私が冬川くんのこと好きなのを知っている唯一の人物でもある。
「冬川くんは昨日休んで提出できなかったプリント出しに職員室に行ったよ。」
「なるほどね〜 てかめっちゃ深刻そうな顔してたけどなんかあった?」
「え?私そんなに深刻そうな顔してた!?」
「うん。だいぶね」
と彼女は笑いながら答えた。
「私で良ければ話聞こうか?話したら楽になることもあるし!」
華恋のこういう友達想いのとこが人気の原因なんだろうなと感心しながら
「実はね・・・・」
と今日の朝のこと華恋に話し始めた。
「えーーーーーーーーーーーー」
華恋の驚いた声が教室中に響き渡り、みんなが私達の方に視線を向けた。すると、華恋はすかさず私の手を取り
「ちょっと来て」
と引っ張られ屋上に連れて行かれた。
 屋上に着くなり
「あかね〜あんたすごいわ〜私ならできないな。よくやった!」
と私の肩を持ちながら言う華恋に
「私も考えて言ったわけじゃないくて、とっさに言っちゃったから。冬川くんも少し困ったような感じだったし・・・」
と落ち込みながら答えると
「でもそのおかげでクリスマスデート行けるんでしょ?なら結果オーライじゃん!」
と笑顔で手をグットにしながら言った。
 「確かにそのおかげならよかったのかな」と考えていると
 「それに、冬川もクリスマスの日に異性を遊びに誘う意味くらいしてるだろうし、その上でいいよって言ってるなら期待してもいいんじゃない?だからがんばれ!」
と背中をバンバン叩きながら励ましてくれた。
 「冬川くんも私のこと意識してくれてるのかな?」という疑問も残りつつこの日の昼休みは終わった。
 
 いくら恋愛に無頓着な冬川くんでもクリスマスに異性を誘う意味はわかっているはず。だとしたら華恋の言う通りちょっとくらいは期待してもいいのかな?・・・