今年も12月に入り、寒さが本格的になってきたと同時にクリスマスムードになり始めた。
 高校最後の年ということもあり、クラスのみんなが「高校生活最後のクリスマス誰と過ごす?」という話で盛り上がっている。
 そんな中僕は「今年もクリボッチかな」と考えていた。僕、冬川葵(ふゆかわあおい)はこの18年間の人生において、クリスマスを家族以外の誰かと過ごしたことはない。なんなら今まで彼女どころか好きな子がいたことがなく、女性とデートしたことすらない。「クリスマスは僕には関係のない」と自分に言い聞かせ、読みかけの本を開こうとしたとき、
 「みんな席についてー」
と担任の小早川(こばやかわ)先生が入ってきた。今年から教師になった女の先生で高校生と年齢も近いことから、生徒からの人気がすごく、よく生徒と昼ご飯を食べながら恋バナをしている。
「今日から転校生がうちのクラスに入ってきます」
先生のその言葉で教室がざわめいた。
「みんな落ち着いて転校生が緊張しちゃうでしょ」
と先生が言うとみんな静かになり、
「よし、静かになったね。じゃあ雪村さん入ってきて」
すると転校生が教室に入ってきた。一瞬人形かと思うくらい華奢な美少女だった。
 転校生は教壇に上がると
雪村(ゆきむら)あかねです。残り短い期間ですがよろしくおねがいします」
と緊張している素振りも見せずに堂々と自己紹介をした。
「雪村さんの席は・・・窓際の一番後ろの席で」
と先生が言った。窓際の一番後ろの席といえば僕の隣の席だ。
「わかりました」といい、彼女は席についた。
「それではHRを始めます。朝の連絡事項は・・・」
とHRが始まった。
 
 4時間目までの授業が終わり、昼休みに入ると
「これからよろしくね。君、名前は?」
と雪村さんが話しかけてきた。
「名前は冬川葵。こちらこそよろしく」 と返すと、
「冬川くんって学校まで自転車で来てるの?」と聞いてきた。
「ううん。歩きだよ」と答えると
「歩きってことは家から結構近いの?」
「ここから歩いて20分くらいの東町ってところ」
「東町!?一緒じゃん!!」
「東町なの?」
「うん。実は私こっち来てからまだそんなに経ってないからあんま道覚えてなくて・・・ 一緒に帰ってくれないかな?」
「いいよ」
「ほんと!?ありがとー!」
彼女は明るい笑顔でそういった。
 それと同時に5時間目開始のチャイムが鳴った。