聖女として大切に扱われていたので、豪華な部屋を与えられていた。
 中に入って見ると、大勢の人が集まっていたが、ウィルモットが困惑したように声を上げていた。

「何でここに、毒薬が……。せ、聖女が皇帝に毒を盛ったなんて、あるはずがないじゃないか!? 彼女は心優しい聖女だぞ?」

 聖女であるカトリーヌが毒を盛ったことが信じられないと主張するウィルモット。
 顔色が真っ青で、かなり慌てた様子で怒鳴っていた。
 レンデルは冷静に辺りを見まわした後、騎士に小瓶の在り方を聞いた。渡された小瓶には、透明の液体が入っていた。
 部屋のアクセサリーが入っている箱に入っていたと説明された。

(おかしい……どうして、そんな分かりやすい場所に?)

 それはレンデルも同じことを考えていたみたいで、

「そんな分かりやすい場所に毒を隠すのは、不自然じゃないか? そもそも彼女は殺されたんだぞ?」

 と、冷静にツッコんでくれた。
 だがウィルモットは思い出したかのように、急に大声を上げる。

「そ、そうだ、きっとセレスティンの仕業だ!! あの女が聖女を陥れようと、こんな場所に隠したに違いない。そ、そうに違いない」

「へっ?」

 聞いていたセレスティンは、思わず変な声が出てしまった。あまりにも身勝手な思い込みだ。
 周りは、そうだと納得している者が多かったが、疑問だけが残る。

(そもそも、どうして、それが毒だと思ったのだろう? 見た目だけだと透明のため、何の液体か分からない。それに、まだ皇帝が毒を盛られたと発表すらされていないのに)