殺人容疑をかけられた悪役令嬢の真実。

ウィルモットの言葉にセレスティンだけではなくカトリーヌも衝撃を受けてしまう。
 土下座をして謝れと要求してきたのだ。無実の罪なのにも関わらず。
 謝ればいいと言う問題ではなくなっている。皇太子の婚約者で、次期の皇妃であるセレスティンが土下座をすれば大問題になる。
 それこそ聖女より格下。いや、それ以上に惨めなことに。

「どうした? さっさと謝るんだ。聖女を叩いて、すいませんと」

 自分の罪でもないのに、そのためだけに謝るなんて出来ない。
 これはアーノルド公爵家の名に傷がついてしまう。

「……出来ません。私はしていません」

 セレスティンはグッと拳を握って堪えながらも言い返した。皇太子に口答えするのはあってはならないが、どうしても従えなかった。
 ガタガタと気刻みに震えながら言い返したが、それがウィルモットの感情に火をつけてしまった。

「貴様。俺がこんなに優しく言っているのに、調子に乗りやがって」

 そう言って、セレスティンの頬を向かって手を上げようとしてくる。
 叩かれると思った、セレスティンは恐怖で目を閉じてしまう。しかし、いくら経っても痛みを感じない。
 恐る恐る目を開けてみると、衝撃的な光景が目に飛び込んできた。
 それを止めてくれたのは、レンデルだった。

「れ、レンデル!? なぜ止めるんだ?」

「……婚約者に手を上げるとは、随分と乱暴になったな? ウィルモット」
「な、何だと!?」

 ウィルモットは強引に掴まれた手を振る払う。だが、レンデルは気にすることもなくセレスティンの方を向いた。

「……怪我は?」

「あ、ありません。ありがとうございます」