殺人容疑をかけられた悪役令嬢の真実。

(私には宝石すら貰ったことがないのに……)

 セレスティンは絶望を味わいながら部屋を出ていく。ふらふらした足取りで廊下を歩いていると、メイドたちの話し声が聞こえてきた。

「本当に聖女様って素敵よね。セレスティン様と大違い」

「なんか噂によると、殿下は婚約破棄を考えているらしいわよ? 聖女様を新しい婚約者にしたいからって」

「えっ? そうなの? でも、当然よね~扱い方が全然違うし」

 その場を立ち聞きしてしまったセレスティンはショックを受ける。令嬢だけではなく、メイドたちまで、そんな噂が出回っているなんて。
 このままでは、婚約者との立場が危うくなってしまう。皇妃になるために厳しい教育に耐えてきたのに。
 セレスティンは、どうしようもない不安と焦りが襲う。

(どうにかして食い止めないと)

 どうしたらいいのか分からない。だが、今のままでは良くないだろう。
 せめてカトリーヌとウィルモットの距離感を改めてもらわないといけない。近過ぎるから変な誤解を生むのだろう。
 セレスティンは、そう考えてながらメイドを去るのを待ってから、廊下を再び歩き出す。
 そして1階に下りたぐらいの時だった。

「あ、セレスティン様~」

 慌てて小走りになりながら追いかけてきたのは他でもないカトリーヌだった。

「えっ? 聖女様!? どうして」

 必死に走ってきたのだろう。ハァハァッと息を切らしながらこちらに来る。
 お茶会をしているはずの彼女が、どうして追いかけてきいたのだろうか?
 セレスティンは驚くがハッとする。令嬢が走るのは、はしたないとされる時代。これを他の人に見られたら聖女としての評判に関わる。