聖女殺人事件から一年後。
 そんなある日、隣国で友好関係であるグリーンフィールド王国から手紙が届いた。
 パーティーの招待状かと思ったら、事件の活躍を聞いた若き国王・エリアスからの調査依頼だった。
 グリーンフィールド王国の王族の血縁は、代々生まれた時に流した一滴の涙が宝石になるという伝説がある。その宝石は『王族の家宝』として大切に扱われる。
 いずれ迎える婚約者に、宝石を結婚指輪に加工して渡すことが古からの伝統とされており。その宝石が何者かの手で盗まれてしまったらしい。
 そのせいで婚約者であるアシュリーと結婚が出来ない状況だと。活躍を見込んで、力を貸してほしいという内容だった。
 グリーンフィールド王国は宝石の発掘が多い産地で、アルバーン帝国も多く輸入したりと古くからお世話になっている。だからレンデルは、依頼を受けることに。

「それでしたら、私も一緒に行っても構わないでしょうか?」

 レンデルだけでも良かったのだが、セレスティンもその国に興味があった。まだ皇后として訪れたこともなく、国王のエリアスとは結婚式で一度会ったきり。
 その時は婚約者は同席していなかったので一度会っておきたいと思っていた。今後の交流にも繋がるから。

「分かった。君は観察力が鋭いから、俺も助かるよ」

「ありがとうございます」

 セレスティンは喜んだが、それが新しい事件の幕開けになるとは、その時は思わなかった。

 そしてグリーンフィールド王国に調査に向かう日。
 依頼は極秘にしたいという希望から、視察という形の名目で国の中に入る。