あいつの“勝負”にのった日、
放課後は迎えに行かなかった。
寿羽との接触禁止……きつすぎる。
毎朝、教室に送る時に必ず放課後は教室で待つように言っている。
寿羽は基本的に約束を破らないし、俺が迎えに来ることを信じて疑わないはず……
だから、迎えに行かなかったことについてLINEが来ると思っていた
なんで?って責められてもいいし、約束破ったって怒られてもよかった
のに、何も来なかった。
次の日、寿羽が家から出る時間とズラして登校した。
いつもは寿羽が家から出てくる5分前に着き、家の前で待つのがルーティン。
寿羽のいない通学時間はいつもよりもとても長く感じられた。
寿羽を送らずに自分の教室に直行したため、怪しまれた。
「お前こんな時間に珍しいな、片桐ちゃんは休み?」
朝練が終わって先に教室にいた陽斗が寄ってくる。
「いや」
「ん?」
「知らね。1人で来た」
「どうしたお前。熱でもあんのか?」
なにかあったのかって何度も聞いてくる
「かもな」
熱なんて全くないが、この状況のせいで熱が出そうだ
あいつとの“勝負”
それは、誰にも言ってはいけない約束だった。
陽斗に相談できないのは結構きつい…けど破るわけにはいかなかった。
破ったら、あいつに何をされるかわからない。
休み時間、廊下を歩く寿羽の姿が見えたと思ったら
隣には倉本の肩が並んでいた。
何かが崩れていくような気がした
寿羽side
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最近、蒼空くんがおかしい。
朝は必ず家の前まで迎えに来てくれていたのに、最近はいつも通りの時間に家を出ても、蒼空くんはいない。
LINEも来てないし……
もしかして、愛想つかれた?
だって、よくよく考えてみれば、蒼空くんが私を送り迎えする義務なんて全くない。
それなのに、毎日欠かさずしてくれていた。
何かあった時は飛んで来てくれて、助けてくれた。
彼女でもないのに、幼なじみっていうだけでこんなにも……
もしかして、彼女ができたのかな。
もしかして、幼なじみのお世話に疲れたのかな。
それとも、
私、何か嫌われるようなことをしちゃったのかな。
もしかして、とネガティブな考えで頭の中が埋められていく。
「はあ……」
授業なんて1個も頭に入ってこない……
「なーに、寿羽がため息なんて珍しいねえ」
「授業終わったよ、そんなにぼーっとしてどしたのさ」
意識が現実に戻されてハッとすると
視界にゆなちゃんとまなちゃんがいた
気づかぬうちに休み時間になっていたらしい
「嫌われたかもしれない…蒼空くんに」
こんなこと、口に出すだけで辛い。
「寿羽が?」
とまなちゃん
「嫌われる?」
とゆなちゃん
「蒼空に限って、ないない!」
見事にハモっている
2人は何を根拠に言っているのかまるでわからない
「分かりにくいことやってるあいつが悪いよね」
そうそう、とまなちゃんが続ける。
「寿羽を困らせてどうすんだって話なのに」
わからないけど、きっと
「でもね、私が悪いんだと思うの。
いつも頼ってばかりで、蒼空くん疲れちゃったんだと思う」
だから、もう迷惑はかけたくない
「幼なじみ、やめたい」
自然とその言葉が出ていた。
「榊はそんな風には望んでないと思うけど」
「だろねえ」
まなちゃんとゆなちゃんは顔を見合わせた。
最近、もう一つ変わったことがある。
それは、倉本くんと話す機会が増えたということ
倉本くんは、些細な変化にも気づいてくれるし
優しいけれど、
なんとなく距離感が近くて苦手意識が生まれている
「寿羽ちゃん~今日一緒に帰らない?」
放課後、HRが終わってすぐ名前を呼ばれた。
「あ、倉本くん。今日はね、えっと、ちょっと約束があって…」
本当は約束なんてないけど、一緒に帰りたくなくて嘘をついてしまった。
私は、嘘をつくのが、
「寿羽ちゃんって、嘘つくの下手っぴだよね。俺、傷ついちゃうなあ」
そう。下手なのです。
「なんかさ、最近俺のこと避けてる?」
ギクリ。
やばい、ばれてる
「いや、そんなつもりは…」
「はいはい、寿羽は私たちと帰る約束なんだからね~。あんたはまた今度ね」
まなちゃんゆなちゃん!
倉本くんがあっという間に追い払われてしまった
「ありがとう…」
また助けられてしまった。
「いいのいいの」
「あいつになんかされそうになったらいつでも言いなよ」
厄介そうなのに榊が巻き込まれてるみたいだし、とまなちゃんがつぶやく。
「え。なんで蒼空くん?」
「いや、まあとにかく私らを頼りなよって話」
「そうそう。んじゃ、そろそろ帰ろっか。駅前に新しいカフェできたみたいだから寄っていこう」
ゆなちゃんも何かを知っていそうな感じがする
なんだか、
私だけが、蒼空くんをわかってない…
蒼空side
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ちょっと、榊。聞きたいことがあるんだけど」
昼休みになってすぐ、廊下で寿羽の友達である浅野につかまった。
今、時間いけるよね。と無理やり屋上に連れていかれる。
「なんだよ」
言いつつ見当はついている。
おそらく、寿羽のことだろう
「寿羽のこと。なんで避けてんの。送り迎えは?大事な幼なじみなんでしょ。
いつもみたく守らなくていいわけ?」
そんなこと、俺が一番わかってる。
「俺さ、やめたいんだよね」
俺はもちろん寿羽のことが好きだけど、
目の前のこいつも、ここにはいない佐竹も、本気で寿羽が好きなんだと思う。
「何を」
寿羽は、天然で、でも嫌味が無くて
それどころか愛嬌があって、真面目で、可愛くて
みんなから好かれる。
だから、焦るんだ。
かっこ悪いと思われるかもしれないけど
「幼なじみ」
は?って言われるだろうって思ってた。
でも、
「で?」
浅野はさほど驚いた様子を見せない。
「で、って、幼なじみをやめたいってこと」
「そんなことは聞いてない」
はあ、とわかりやすくため息をつかれる
「だから、寿羽が好きかどうかを聞いてんの」
質問の意図がわからない。
こいつは、俺の気持ちを察しているはずだ。
「え、それはもちろんす…「あのね、好きな子困らせてどうすんの。寿羽が今、どんな気持ちかわかってる?」」
「寿羽の気持ち…」
正直、考えていなかった。
「倉本としょーもないことやってんのは勝手にしたらいいけど、寿羽が傷つくのだけは絶対に許さない」
浅野の目がいつになく真剣だ。
んじゃ、言いたいことはそれだけだから。といって屋上から出ていった。
なぜ倉本との勝負を知っているのか不明だが
俺は、浅野の話に頷くことしかできなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「何、話って。もしかして、期限まであと1週間しかなくて焦ってきたの?」
余裕の表情を見せられる。
煽っているつもりなんだろうけど、今回は乗らない。
昨日、浅野に言われて気づいた。
寿羽に気持ちを伝えたいだけなのにこんなに遠回りする必要はないんだって
「やめないか。この勝負」
それに、倉本も寿羽のことが本気で好きなら聞いてくれると思った。
それで、と続ける
「寿羽に告白、しないか」
「は?」
「俺たちが知りたいのは寿羽の気持ちだ」
倉本は、困惑の表情を浮かべている。
「勝敗は、寿羽の返事で決めよう」
俺が言い切ると倉本の困惑の表情が変わった。
「確かにその通りだ。寿羽ちゃんに決めてもらおう」
放課後は迎えに行かなかった。
寿羽との接触禁止……きつすぎる。
毎朝、教室に送る時に必ず放課後は教室で待つように言っている。
寿羽は基本的に約束を破らないし、俺が迎えに来ることを信じて疑わないはず……
だから、迎えに行かなかったことについてLINEが来ると思っていた
なんで?って責められてもいいし、約束破ったって怒られてもよかった
のに、何も来なかった。
次の日、寿羽が家から出る時間とズラして登校した。
いつもは寿羽が家から出てくる5分前に着き、家の前で待つのがルーティン。
寿羽のいない通学時間はいつもよりもとても長く感じられた。
寿羽を送らずに自分の教室に直行したため、怪しまれた。
「お前こんな時間に珍しいな、片桐ちゃんは休み?」
朝練が終わって先に教室にいた陽斗が寄ってくる。
「いや」
「ん?」
「知らね。1人で来た」
「どうしたお前。熱でもあんのか?」
なにかあったのかって何度も聞いてくる
「かもな」
熱なんて全くないが、この状況のせいで熱が出そうだ
あいつとの“勝負”
それは、誰にも言ってはいけない約束だった。
陽斗に相談できないのは結構きつい…けど破るわけにはいかなかった。
破ったら、あいつに何をされるかわからない。
休み時間、廊下を歩く寿羽の姿が見えたと思ったら
隣には倉本の肩が並んでいた。
何かが崩れていくような気がした
寿羽side
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最近、蒼空くんがおかしい。
朝は必ず家の前まで迎えに来てくれていたのに、最近はいつも通りの時間に家を出ても、蒼空くんはいない。
LINEも来てないし……
もしかして、愛想つかれた?
だって、よくよく考えてみれば、蒼空くんが私を送り迎えする義務なんて全くない。
それなのに、毎日欠かさずしてくれていた。
何かあった時は飛んで来てくれて、助けてくれた。
彼女でもないのに、幼なじみっていうだけでこんなにも……
もしかして、彼女ができたのかな。
もしかして、幼なじみのお世話に疲れたのかな。
それとも、
私、何か嫌われるようなことをしちゃったのかな。
もしかして、とネガティブな考えで頭の中が埋められていく。
「はあ……」
授業なんて1個も頭に入ってこない……
「なーに、寿羽がため息なんて珍しいねえ」
「授業終わったよ、そんなにぼーっとしてどしたのさ」
意識が現実に戻されてハッとすると
視界にゆなちゃんとまなちゃんがいた
気づかぬうちに休み時間になっていたらしい
「嫌われたかもしれない…蒼空くんに」
こんなこと、口に出すだけで辛い。
「寿羽が?」
とまなちゃん
「嫌われる?」
とゆなちゃん
「蒼空に限って、ないない!」
見事にハモっている
2人は何を根拠に言っているのかまるでわからない
「分かりにくいことやってるあいつが悪いよね」
そうそう、とまなちゃんが続ける。
「寿羽を困らせてどうすんだって話なのに」
わからないけど、きっと
「でもね、私が悪いんだと思うの。
いつも頼ってばかりで、蒼空くん疲れちゃったんだと思う」
だから、もう迷惑はかけたくない
「幼なじみ、やめたい」
自然とその言葉が出ていた。
「榊はそんな風には望んでないと思うけど」
「だろねえ」
まなちゃんとゆなちゃんは顔を見合わせた。
最近、もう一つ変わったことがある。
それは、倉本くんと話す機会が増えたということ
倉本くんは、些細な変化にも気づいてくれるし
優しいけれど、
なんとなく距離感が近くて苦手意識が生まれている
「寿羽ちゃん~今日一緒に帰らない?」
放課後、HRが終わってすぐ名前を呼ばれた。
「あ、倉本くん。今日はね、えっと、ちょっと約束があって…」
本当は約束なんてないけど、一緒に帰りたくなくて嘘をついてしまった。
私は、嘘をつくのが、
「寿羽ちゃんって、嘘つくの下手っぴだよね。俺、傷ついちゃうなあ」
そう。下手なのです。
「なんかさ、最近俺のこと避けてる?」
ギクリ。
やばい、ばれてる
「いや、そんなつもりは…」
「はいはい、寿羽は私たちと帰る約束なんだからね~。あんたはまた今度ね」
まなちゃんゆなちゃん!
倉本くんがあっという間に追い払われてしまった
「ありがとう…」
また助けられてしまった。
「いいのいいの」
「あいつになんかされそうになったらいつでも言いなよ」
厄介そうなのに榊が巻き込まれてるみたいだし、とまなちゃんがつぶやく。
「え。なんで蒼空くん?」
「いや、まあとにかく私らを頼りなよって話」
「そうそう。んじゃ、そろそろ帰ろっか。駅前に新しいカフェできたみたいだから寄っていこう」
ゆなちゃんも何かを知っていそうな感じがする
なんだか、
私だけが、蒼空くんをわかってない…
蒼空side
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「ちょっと、榊。聞きたいことがあるんだけど」
昼休みになってすぐ、廊下で寿羽の友達である浅野につかまった。
今、時間いけるよね。と無理やり屋上に連れていかれる。
「なんだよ」
言いつつ見当はついている。
おそらく、寿羽のことだろう
「寿羽のこと。なんで避けてんの。送り迎えは?大事な幼なじみなんでしょ。
いつもみたく守らなくていいわけ?」
そんなこと、俺が一番わかってる。
「俺さ、やめたいんだよね」
俺はもちろん寿羽のことが好きだけど、
目の前のこいつも、ここにはいない佐竹も、本気で寿羽が好きなんだと思う。
「何を」
寿羽は、天然で、でも嫌味が無くて
それどころか愛嬌があって、真面目で、可愛くて
みんなから好かれる。
だから、焦るんだ。
かっこ悪いと思われるかもしれないけど
「幼なじみ」
は?って言われるだろうって思ってた。
でも、
「で?」
浅野はさほど驚いた様子を見せない。
「で、って、幼なじみをやめたいってこと」
「そんなことは聞いてない」
はあ、とわかりやすくため息をつかれる
「だから、寿羽が好きかどうかを聞いてんの」
質問の意図がわからない。
こいつは、俺の気持ちを察しているはずだ。
「え、それはもちろんす…「あのね、好きな子困らせてどうすんの。寿羽が今、どんな気持ちかわかってる?」」
「寿羽の気持ち…」
正直、考えていなかった。
「倉本としょーもないことやってんのは勝手にしたらいいけど、寿羽が傷つくのだけは絶対に許さない」
浅野の目がいつになく真剣だ。
んじゃ、言いたいことはそれだけだから。といって屋上から出ていった。
なぜ倉本との勝負を知っているのか不明だが
俺は、浅野の話に頷くことしかできなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「何、話って。もしかして、期限まであと1週間しかなくて焦ってきたの?」
余裕の表情を見せられる。
煽っているつもりなんだろうけど、今回は乗らない。
昨日、浅野に言われて気づいた。
寿羽に気持ちを伝えたいだけなのにこんなに遠回りする必要はないんだって
「やめないか。この勝負」
それに、倉本も寿羽のことが本気で好きなら聞いてくれると思った。
それで、と続ける
「寿羽に告白、しないか」
「は?」
「俺たちが知りたいのは寿羽の気持ちだ」
倉本は、困惑の表情を浮かべている。
「勝敗は、寿羽の返事で決めよう」
俺が言い切ると倉本の困惑の表情が変わった。
「確かにその通りだ。寿羽ちゃんに決めてもらおう」
