あの日から、私の中で蓮くんへの気持ちがますます強くなっていった。猫を抱く蓮くんの優しい表情が、頭から離れなかった。彼が冷たい印象のある人物だと思っていたけれど、実はとても繊細で優しい一面を持っていることに気づかされた。

それから数日後、学校が終わった後、私は教室で蓮くんと顔を合わせた。彼はまた、猫を連れてきていた。

「また、その猫……?」私は驚きながらも言った。

「うん、結局保護することにした。」蓮くんは無表情でそう答える。けれど、その口調には、どこか誇らしげな、優しさが滲んでいるように感じた。

「それにしても、すごいね。蓮くん、猫にも優しいんだ。」私は少し照れくさく言った。

「別に、当たり前だろ。」蓮くんは少し顔を赤らめながらも、猫を撫で続けた。その仕草が、私の胸をさらにドキドキさせる。

「本当に優しいんだね。」私はもう一度言ってしまった。その言葉を言った瞬間、蓮くんは一瞬、私の方を見て、軽くため息をついた。

「……お前、しつこいな。」でも、その顔には少し笑みが浮かんでいるように見えた。普段、無表情で冷静な蓮くんが、笑顔を見せるなんて珍しかった。なんだか、心が温かくなるのを感じた。

その後、蓮くんは猫を引き取ることを決め、私にそのことを話してくれた。猫を飼うことになった彼に、私は思わず言った。

「名前、決めたの?」

蓮くんは少し考え込んだあと、顔を上げて答えた。

「まだ決めてないけど……お前、なんか案あるか?」

「え、私?」予想外の質問に私は驚いたけれど、考えてみると、猫に名前を付けるのはとても楽しそうだと思った。

「うーん、じゃあ、シロちゃんとかどう?」私は冗談半分で言った。

「シロ……か。」蓮くんは少し考え込みながら、猫を見つめていた。「悪くないな。シロちゃんか。」

その瞬間、蓮くんの顔に少し柔らかな表情が浮かび、私はその変化にドキリとした。彼が猫に対してこんなに優しいのは、きっと猫を愛する心があるからだろうけど、その表情が私には新鮮で、なんだかドキドキしてしまう。

「シロちゃん、可愛い名前だね。」私は微笑みながら言った。

「そうだな、まあ、ありがとう。」蓮くんも少し照れくさそうに答えた。

その後、蓮くんはシロちゃんを大切に育て始め、私は時々放課後に教室でその猫を見に行くようになった。シロちゃんはとてもおとなしくて、蓮くんが撫でるたびにゴロゴロと喉を鳴らしていた。彼の手が優しく猫を撫でる姿を見ていると、私の心は温かくなった。

でも、少しずつ気づいていった。蓮くんが見せる優しさは、猫にだけではなく、私にも向けられていることに。授業中に小さなノートを回してきたり、放課後に一緒に帰るようになったり、何気ない言葉でも彼の優しさが感じられるようになった。

ある日、放課後に私たちが一緒に帰る途中、蓮くんがぽつりと言った。

「……猫、飼って良かったな。」

その言葉に、私は驚きながらも答えた。

「うん、シロちゃんも嬉しそうだし、蓮くんも嬉しそう。」

「別に、嬉しいとかそういうのじゃなくて……まあ、面倒を見るのが楽しいから。」

でもその顔には、少しだけ柔らかい表情が浮かんでいた。私の胸が、またドキドキと高鳴った。

「……ほんとうに、優しいんだね。」私は思わず言ってしまうと、蓮くんは少し照れくさそうに顔を赤らめた。

「うるさいな、そういうの、あんまり言わないでくれ。」

でも、彼の声はどこか嬉しそうに聞こえた。私は心の中で、これからも蓮くんの隣にいたいと思った。彼の冷たい部分も、優しい部分も、すべてを受け入れたくて、どんどん彼に惹かれていく自分がいた。