隣の席のきみ

第4章: 蓮くんの意外な一面

それから数週間が経ち、美咲と蓮は少しずつ話すことが増えていた。昼休みに一緒にランチを食べることもあれば、放課後、教室で残って宿題をしていることも増えた。でも、蓮くんは相変わらず、私にはどこか素っ気ない。どこか遠くにいるような雰囲気を感じるけれど、それでも彼との時間が心地よくて、自然と一緒にいることが増えていた。

そんなある日、放課後、私が教室に残って勉強をしていると、突然蓮くんが教室に入ってきた。その手には小さな白い猫を抱えている。

「……え?」

驚いて顔を上げると、蓮くんはそれに気づき、少し照れくさそうに言った。

「家の近くで迷子の猫を見つけたんだ。帰り道に見かけて、つい抱えてきちゃった。」

その猫は、小さな白い毛並みで、目が大きくてとてもかわいかった。蓮くんがその猫をぎゅっと抱きしめると、猫はおとなしくその腕の中で丸くなっていた。

「すごくかわいい……」私は思わず声を漏らした。

「……そう?」と蓮くんは少し照れくさそうに顔を赤らめながら答える。その表情が、普段の冷たい印象とはまるで違って、少し柔らかく見えた。

「うん。蓮くん、猫が好きなんだね。」私は驚きながらも、思わずその猫を見つめていた。

「うるさいな。」蓮くんは少し慌てたように猫を撫でながら言った。「別に、好きじゃないけど……ただ、見捨てられないだけ。」

その言葉には少し驚きながらも、蓮くんの中にある優しさを感じることができた。それに、彼が猫に対してあんなに優しく接している姿が、普段の冷たく無口な印象とまるで違って、私の心を強く引き寄せた。

「ほんとうに、優しいんだね。」私は素直にそう言うと、蓮くんは少し黙ってから、軽く笑った。

「……別に、ただの猫だから。」そう言いながらも、蓮くんの顔にはほんのりと嬉しそうな表情が浮かんでいた。

その瞬間、私は蓮くんに対して、さらに惹かれていく自分を感じた。普段は冷たくて、少し遠い存在に感じていた彼が、こんなにも優しさを持っていることに驚き、そしてそのギャップに胸がドキドキしてしまう。

その後、蓮くんは猫を抱えたまま、教室の隅にある机の上にそっと置いた。猫はすぐにその場所で丸くなり、静かに眠り始めた。蓮くんもその横に座り、私はその隣に座ることになった。

「この子、どうするの?」と私は尋ねた。

「とりあえず、保護しておこうと思って。」蓮くんはそう言いながらも、猫の頭を優しく撫でる。その手のひらに伝わる柔らかさが、普段の彼とは全く違う優しさを感じさせる。

「……優しいんだね、本当に。」私は再度、心からそう言った。

「うるさいな、そんなに言うな。」蓮くんは少し顔を赤らめて、照れたように猫の背中を撫でた。

その時、私は蓮くんが普段見せない一面を知り、ますます彼に惹かれていくのを感じた。猫を可愛がる姿に、こんなにも心が温かくなるなんて、想像もしていなかった。