夜中という事もあり、家の玄関は音を立てないように静かに開けたつもりなのに。
「ぎゃっ……」
「おい、大丈夫か?」
「う、うん」
いちかが段差につまずくものだから結局音を立ててしまって、2人で口元に人差し指を当てて"シーッ"なんて言いながらクスクスと笑い合った。
兄ちゃんと父ちゃんが寝ているリビングの横の廊下を足音をたてないようにそーっと歩く。そのまま、階段を上がって行く。
電気をつけないまま俺の部屋に2人で入って、暗がりの中でいちかと目が合って再びキスを落とした。
何度も何度も軽いキスを落としてから、いちかの小さなデコに自分の額をコツンと当てる。
キスは甘く深いものになるから、身体は冷えきったままなのに口元だけは熱くなっていく。
「んんんーー……」
「っ、声出すなよ」
一端下唇を吸って、コイツに視線を向ければ
「わ、分かってる」
子供の様に真っ赤な顔をした いちかがいて、とてもいけない事をしている気分になっていった。



