「な……、りゅ、琉?」

「……んー」

「なんで…、キスしたの?」

「分っ……、かんねぇよ!」


いちかが目を丸くしながら両手で俺の胸を押したけど、そんなのお構い無しにまた1つキスを落とす。


お互いの冷えきった唇から熱が伝わってきて、何度も口付ける。
冷たい頬に両手を添えて、柔らかい唇がフニャフニャになっていく。いちかは抵抗する事なく俺に身を任せるから。


あれ?いいのか?
コイツ、兄ちゃんが好きなんじゃねぇのか?

なんて疑問が沸いたところで止める事は出来ない。


車のクラクションが遠くに聞こえる。酔っ払いのオヤジが通ったかもしれない。でも、そんなのはまるで遠くに聞こえて。



小さくて冷たいコイツの手をギュッて握れば、昨日と同じ様に握り返してくるから。手を繋いだ位で中学生かって思う位に恥ずかしくなって、それと同時に緊張が走る。

外灯の明かりと真ん丸の月、数少ない星空の下を手を繋いで歩けば、夜道には白い息が広がっていく。
だから何も言葉を発しなくても、繋がっているような気がした。