「変わんないのなー」
小さな息を吐いて、背中に手を回せばいちかの身体は簡単に俺の腕の中にすっぽりと収まった。
「な、なにする」
「お前だって何で泣いてんだよ」
「泣いてなんか……」
ズッと音をたてて鼻を啜るから、全く説得力がない。
「泣いてるだろ」
「泣いてないし」
叫ぶように言葉を吐くけれど、わかりきった嘘を何でつくのか。
生意気に意気がるいちかの顎を上に持ち上げれば、鼻と頬を真っ赤になって瞳は潤いを増してキラキラと輝いていたから驚いた。
「ちょっと、可愛いかも……」
「はぁ?」
「や、すっげ可愛いかも」
「な、なにそれ」
自分でも何言っちゃってるんだろうと思った。いちかに"可愛い"だなんて。後で絶対に馬鹿にされると。
「ヤベー……」
でも、眉をつり上げて涙を我慢しているいちかがありえない位に可愛くて。自分の行動なんてコントロール出来るわけが無かったんだ。
「え、どういう意味……んんっ」
気が付いたら、キスを1つ落としていた。



