「そんなの全部幻想ですから!」
「妬みか?あー、ああいう子に包み込まれたいし」
「ね、妬みじゃないし!」
「お前もさー、清楚っつうかさぁ」
「……」
「ツンツンしてないで、もっと可愛らしく柔らかみってものを持った方がい……」
「……っ、」
「どうしたんだよ?」
「ほっといてよ!」
向かい合って立ついちかが唇を噛み締める。
大きめの瞳には涙が溜まり、今にも零れ落ちてしまいそうだった。
「え……、いちか?」
「あっち行って」
そう言って俺に背中を見せる様に、後ろを向いて歩き出した。
「や、帰る方向一緒だから」
「琉なんて、いらない!」
「待てって、いちか!!」
手をぐいっと掴めば再び向かい合う形になって、さっきとは違うのは いちかが足元に顔を向けていて顔が見えない事。
だけど、きっと真っ赤になって涙が零れ落ちるのを必死に我慢してるんだろうな。
あの時みたいに──。



