向かい側に座ってコタツの布団をすっぽりと被る いちかの姿は、小柄で一回り小さいくせに態度だけは本当に馬鹿でかい。
肩まで伸びたストレートな髪は艶のある黒髪で綺麗だと思うが、清楚系の女の子とは大違いだ。


「つーか、何その髪。染めたの?」

斜め分けられた前髪からのぞく、大きくて猫みたいな瞳でギロリと睨まれる。


「……うるせーな」

「美容室で○○みたくして下さいとか言ったんだろうけどさー」

「言ってねぇし」

「はい、残念。顔が全ッ然、違うから。全ッ然、爽やかじゃないから」

「ふざけんな」

そう怒鳴ったところで、いちかはからかうように笑い声をあげるだけ。さらに余計にテンションが高くなっていくから、俺からは諦めの溜め息が漏れた。


「てかさー、お前さいつまでいんの?」

いちかの住んでいる所は山奥で、駅はない、バスは2時間に1本という凄い田舎な場所にある。
2年前、村だったのが隣の市に乗っ取られ……じゃなくて、合併したんだっけな。


「3日の予定だけど?」

「おー。3日で帰んだな」

だから、何かと理由付けて俺の家族が住んでいる東京へ遊びに来たりする。