「あっ、いた!」
小さないちかの叫び声が聞こえて、指差す方向に顔を向ければ。白くて小さな何かが僕等の前を切ったのが一瞬目に入る。
「待って!」
「ちょっと、いちかちゃん?」
「こっちだよ」
「えー……」
暗くて足元が見えなくて、寒くて慣れない山道で足を上手く動かせない。
「きゃっ……、」
「うわぁぁぁあ!!」
突然、足元が崩れて不安定になって、そのまま転ぶように何処かに落ちた。
「い、痛……っ」
「だ、大丈夫?りゅうちゃん」
確かただの擦り傷だったのだけど、当時は骨折してしまったんじゃないかって思った位で。
「う、うん……」
「本当に?」
「うん、なんなんとか」
俺といちかは山の傾斜から滑り落ちて、さっきまで見えていた明かりも見えなくなってしまった。
「りゅうちゃん、ごめんね」
「大丈夫だよ」
動けなくなってしまった俺といちかは泣きながら謝って、2人で寄り添いながら大人達が探してくれるのを待ったんだ。
その後、父ちゃんや叔父さん逹が俺といちかがいなくなった事に気付いて、見付けてくれて助かったのだけど。母ちゃん曰く、村中大騒ぎになって大捜索して大変だったらしい。



