「でも、星はお前んとこのが綺麗だよな」
「……え?」
「昔、星がいっぱい見えた」
「……今度。くれば?星見に」
「まぁ、気が向いたら……」
なんとなく、ぎこちなくなった会話は直ぐに途切れて、いちかと俺の間には沈黙が広がった。
2人並んで歩いて白い息を吐けば、遠い記憶が頭の中に蘇る。
──りゅうちゃん、ごめんね
──大丈夫だよ
「冬休みだったよね」
沈黙を先に破ったのはコイツの方で、いちかは数少ない星空を見上げて目元を細めた。
「え?」
「ほら、小さい頃さ」
「んー……」
「お正月で琉がウチの本宅に泊まりにきたときにさ」
「……」
「家のまわりを散策してたら迷子になっちゃったの」
「あー、そういえば。そんな事もあったなー」
なんて曖昧な返事をしたのは。何て返していいか分からなくて、相槌に困ってしまったからで。
まさか、いちかと同じ記憶を思い出していたなんて想像してもみなかったんだ。



