家から外へ出れば、身体に染みる様な冷たい空気が俺の眠気は完全に吹き飛んだ。外灯だけが照らされる静かな住宅地が広がる。


「いいよねぇ」

「……」

「歩いてコンビニとかレンタルビデオ屋行けるのって羨ましい!」

そう言って、いちかが口を開く度に白い息が吐き出される。


「とにかく、さーみぃ」

夕方、家に帰ってきた時より冷たい空気におそわれて、無意識に手を擦り合わせて口元へと持っていった。


団地から少し歩けば、店の明るいランプが光る看板と煩い位に賑わう声が聞こえてくる。


「時間の割に、なんか明るいねー」

「まぁ、店だらけだからな……」

「確かにそうだね」

自宅から駅まで徒歩10分という事もあり、便利だけど自然な緑が少ないのは残念だ。