──りゅうちゃん!


小さな頃の いちかは、やけにお姉さんぶっては1つ下の俺とよく遊んでくれた。


──特別に教えてあげる!

──本当に?

林の中の秘密基地に、どんぐりが沢山拾える場所。幻のカブトムシがいる木の根本。

夏休み、冬休みしか母ちゃんの実家に行く事はなかったのに。それでも、いちかとの子供の頃の思い出は沢山あった。

兄ちゃんとは年が離れていたから一緒に遊んでも泣かされるばかりで、年が1つしか違わない いちかと遊ぶ事が多かったんだ。
いちかも近所に同じ年の友達がいなかったから、余計に俺と遊びたかったかも知れない。


ふと隣を歩く いちかに視線を落とせば、クリスマスの為に飾られたイルミネーションを いちかは目を輝かせながら眺めているからこっちが気が抜けてしまう。


無邪気に笑って、すぐ泣いて、怒って。昔から喜怒哀楽の激しい奴だった。

昔は兄ちゃんより俺のがコイツと仲が良かったのに。突然、俺に対してだけからかうように生意気になったんだ──。



結局、俺とイチカの手は駅に着いて帰りの切符を買うときまでしっかり握られていて。
その時に離れてしまった右手に名残惜しさを感じた。