「て、え?あぁ。手?」
「そぅ、手っ!ちょうだい!」
なんて、いちかが勢いよく俺の前に手を出してくるから、戸惑いと疑問を抱きながらも自分の手を差し出すしかなくて。
手を繋いだ状態でいちかと歩きはじめた。
やっと水族館から外に出ると既に日が落ちて、辺りは暗くなっていた。
「寒いねー」
「お、おぉ……」
冬の冷たい空気が頬を突き刺して、口元からは白い息が吐き出されるのに。繋がれた手だけが妙に温かくて。
手から伝わる体温に意識が向いてしまう。
決して注目されている訳ではないけれど、周りの視線が妙に気になって。こうやって並んで歩いていると、まるでデートみたいだなんて錯覚を起こしてしまいそうになる。
いちかの手をギュッて握ってみれば、握り返された手はとても小さなもので。
こいつ、小さいな。手も背も、態度以外は……。
昔は背も同じ位だったのに──。



