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そんなギリギリな朝は、基本的にバタバタである。
「お母さん!!お願いがあります!!!水筒用意してください。」
「琴!もっと早く起きなさい!!
結局いつも私が用意してるよね?!
高校生にもなって、いつになったら身の回りの準備を一人でできるわけ?」
「わかった。わかった。明日はもうちょっと早く起きるから。とにかく準備を手伝って!」
こう言ってはやく起きられた試しなんてないんだから。とお母さんは小言を漏らしていた。
妹のほうがしっかりしてるわ。と付け加えて。
そんなの、私だって分かってるって。
お母さんの小言だって、こんなに朝がバタバタなのも、いつも通りの爽やかな朝だ。
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自転車のハンドルを思いっきり握って、立ち漕ぎで学校まで。
だいたいギリギリなので、コンマ1秒も無駄にできない。
琴は同じ高校へ通う蒼人、そして奈津 三人で通学している。
男子1名、女子2名 端から見たらなんだかすごい関係のように思えて観察したくなるかもしれないが、
恋やそういうものは今のところ全く見られない。
幼なじみというのは、とても特別視されやすいものだが実は恋愛が絡むことは少なかったりする。
だって、生まれたところも一緒で、幼稚園も一緒だよ?
なんなら小さい頃は一緒にお風呂なんかにも入っていたわけで。
だから、幼馴染恋愛が絡むなんでエゲツない努力があるのではと、琴は思っていたりする。
殻を破れない、今まで長年培ってきたその時間のせいで思うように素直になれなかったりするのは
幼馴染という特殊な関係のペナルティだったりして。
