The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

「うめぇ。チョコうめぇ」

「うん、美味しいね」

アシュトーリアさんがお取り寄せしたチョコレートは、隣国アシスファルト帝国から輸入した、王室御用達高級チョコレート。

舌が驕った『青薔薇連合会』幹部組も、美味しく食べられる逸品である。

とても美味しい。

「うふふ。皆喜んでくれて良かったわ」

アシュトーリアさんも、いつも以上の笑顔であった。

ここ最近、こんな穏やかな時間を過ごすことなんてなかったもんな。

『青薔薇解放戦線』が革命起こしたり、『セント・ニュクス』が化学兵器使ったりと色々忙しかったし。

まぁ、花火大会行ったりプール行って遊んだりはしてたから、そんなに忙しくねぇだろと言われたらそれまでだが。

どんなときでも、日常を楽しめる心の余裕ってのはあった方が良いぞ。

どっかの帝国騎士団みたいに、いつも忙しなく働いていたんじゃ息が詰まって仕方ない。

やっぱり平和が一番。

紅茶を飲みながらチョコレートを摘まみ、俺は改めてそう思った。

俺は確かに巷では死神だとか何だとか言われてるが、好きで死神になってるんじゃなくて、本当は平和を愛する平和主義者なんだぞ?

すると。

「あ、そうだわ皆。来週、皆でお花見に行きましょうね」

「…」

さらっ、と。

アシュトーリアさんは、皆でチョコレート食べましょうね、のノリで。

素晴らしく良い笑顔で誘ってくれた。

「…何言ってるんですか、アシュトーリアさん」

ルルシーは、ジト目でアシュトーリアさんを睨んだ。

「お花見行きましょう、皆で」

しかし狼狽えないアシュトーリアさん。さすがである。

「凄いですね、ルリシヤ。あなたも大正解ですよ」

「俺もだいぶ分かってきたな」

君は前々から分かってたよ。話の分かる男って良いよな。

「ねぇアイズ。今年の桜はいつ頃咲くかしら」

「そうですね…。…この辺りの満開は、来週の水曜くらいだそうです」

アイズはスマホをポチって、速攻で調べてくれた。

仕事が早い。

対応も早い。既に行く気満々である。

こちらも話の分かる人間だ。

「じゃ、皆水曜に予定を空けてね。それからお花見会場貸し切るから、アイズ、手配を頼めるかしら」

「分かりました」

満開時のお花見スポットを貸し切りなんて、贅沢だな。

これぞマフィアの権力。近隣の住民の皆さん、ごめんよ。

今年の桜の見頃は、俺達がもらった。

「それと、お菓子やお酒の用意も宜しくね」

「はい」

「アリューシャポテチ食いたい!アイ公、ポテチ買って」

「はいはい。分かったよ」

「…小学生かよ、お前は」

ルルシーがぽつりと呟いていた。聞こえなかったことにした。

良いじゃんポテチ。たまに無性に食べたくなるときない?

俺はない。

「…アシュトーリアさん。お花見なんてしてる時間は…」

こめかみを押さえた真面目ルルシーが、文句を言いかけたが。

「私、またフライドポテト作ってくるわ」

「じゃあ俺も弁当作ってこよう。ルルシー先輩と二人で」

「あ、おいルリシヤお前何勝手に」

「じゃあ俺はお酒買ってきますね」

何の種類買ってこようかな。

「私は場所取り係だね」

「じゃ、アリューシャは食べる係で」

完璧な分担である。

「…」

ルルシーは何かを言おうとしたが、俺達がわいわいとお花見の段取りについて話しているのを見て。

「…はぁ」

溜め息一つで、全てを諦めていた。

賢明な判断だ、ルルシー。