The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

あのときほど、驚いたことはない。

もう抗争は終わったのに、何故まだ銃を向ける必要がある?

しかも…どうして、仲間であるはずの俺に?

「グリーシュ…?」

俺は状況を理解出来なかった。

これが何を意味するのか、分かっていたのに、分かりたくなかった。

「これは…何なんだ?何の冗談だ…?」

「冗談なんかじゃない。もう組織は充分大きくなった。…だから、お前はもう必要ない」

必要ない…?

必要ないって、何だ。

「ずっとお前のことが邪魔で仕方なかったんだよ。いつか捨ててやろうと思ってた。でも、お前のその力だけは本物だったからな…。利用するだけ利用して、それから捨ててやろうと思ったんだよ。今が、そのときだ」

俺は耳を疑った。そんなはずはない、と思った。

グリーシュが…俺を利用していた?

邪魔で仕方なかった?

「そんな…。そんなの嘘だ。グリーシュ、俺達は仲間だろう。親友だって言ってくれたじゃないか!」

「あんなの信じてたのか?さすが、元貴族様は世間知らずだな…。貧民街じゃ、あの程度の社交辞令は常識だよ。お前を利用する為に言っただけだ。コロッと騙されやがって、本当馬鹿だな、お前。元貴族様って言っても、大したことねぇな」

「…!」

…社交辞令。

あれは全部、俺を騙して利用する為の社交辞令だったのか?

始めから…グリーシュは、俺を利用するつもりで。

「お前が大人しく俺の言うことに従うなら、もう少し飼ってやっても良かったんだがな…。飼い犬の癖に飼い主の俺に逆らってきて、面倒臭いから、お前はもう捨てることにする。『セント・ニュクス』にお前は必要ないんだよ」

「…グリーシュ…」

「俺達は『厭世の孤塔』の残党も併合した。これから、もっと力をつけて、今度は『青薔薇連合会』を叩く。俺達『セント・ニュクス』が、ルティス帝国裏社会の覇者になるんだ」

「…」

「じゃあな、ルリシヤ。ご苦労様。お前は本当…便利な駒だったよ」

…人を駒としか思ってないのは。

…お前じゃないか。グリーシュ。

『セント・ニュクス』のリーダーとしての、ルニキスという名前じゃない。

グリーシュは、俺をルリシヤと呼んだ。

俺はもう…ルニキスじゃない。

グリーシュの親友のルニキスじゃない。

グリーシュは、すっと片手を上げて部下に指示した。

俺を撃てと。

用済みの俺を殺せと。

グリーシュには、何の躊躇もなかった。

…そうか。

親友だと思っていたのは…俺だけだったんだな。

俺が…馬鹿だったんだ。

俺は一瞬迷った。このまま、部下に撃たれるままに死んでしまおうかと。

それで良いような気がした。兄に捨てられ、今度は親友だと思っていた人に捨てられるのだ。

もう二度と…こんな思いはしたくない。

死んだ方が良い。そう思った。

しかし。

部下が引き金を引く瞬間に、俺はその拳銃を蹴り飛ばし、後ろに跳ねた。

グリーシュは驚いたように目を見開いた。

俺が疲弊のあまり、もう動けないと思ったのだろうが。

人間、死の危険が迫れば、火事場の馬鹿力が出てくるものだ。

俺はそのまま逃げた。ただひたすらに夜の街を駆けた。

あいつらに…殺される訳にはいかなかった。