The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

それ以来、俺はグリーシュと共にあった。

同年代の友達なんて、今まで一人もいなかったというのに…俺とグリーシュは、妙に気が合った。

二人で組めば、賭け事も負けなしだった。

そう…ルレイア、お前とルルシーのような関係だったんだ。

俺はグリーシュに心を許した。だから、他の人間には絶対に話すまいと誓っていた自分の出自のことも、彼にだけは話した。

グリーシュは、俺の告白を黙って聞いてくれた。





「…そうか。何と言うか…色々大変だったんだな」

「…そうだな」

真夜中。

俺とグリーシュは孤児院を抜け出して、空き地のガラクタ置き場に、二人で腰掛けていた。

最近の俺達は、こうして夜になると孤児院を抜け出して、好きなところに遊びに行っている。

俺達だけじゃない。孤児院では、ある程度の年齢になればほとんどの子供がそうしていた。

夜遊び、って奴だ。

賭場にも出入りしていたし、俺達二人はその界隈ではそこそこ有名人だった。

俺はその夜、グリーシュに自分の話をした。

孤児院では、互いの過去を詮索しないのが暗黙の了解のようになっている。

引き取り手がなく孤児院に来るような子供だ。皆、およそ愉快とは言いがたい経歴を持っている者が大半だった。

だから、互いの過去を聞き合うようなことはしない。

聞くとしたら、それは本人が語りたくて語ったときだけだ。

今の俺のように。

「ルリシヤはさ…字も書けるし頭良いから、ちゃんと教育受けてるんだろうなーとは思ってたけど…へへ、そうか。元貴族だったんだ。成程なぁ…ちょっと納得」

「…」

「にしても、元貴族の坊っちゃんが、今や賭場で大人達を泣かせてるんだもんなぁ。ルリシヤの兄ちゃん、こんなこと知ったら笑うだろうな」

「…あぁ」

俺の堕落ぶりに、手を叩いて喜ぶことだろう。

俺は今や、正義の帝国騎士とは正反対のことをしている。

孤児院にいれば、それは仕方ない。孤児院出身というだけで、俺達は表社会で生きにくい生活を強いられるのだから。

「でも、俺にとっては良かったよ。ルリシヤが家を追放されて良かった」

「…え?」

良かった、だって?

「あぁ、怒らないでくれよ。そういう意味じゃないから…。お前が不幸になったことを喜んでるんじゃない。そうじゃなくてさ…そのお陰で、会えただろ?俺達」

「…それは」

「帝国騎士官学校なんかに行って、帝国騎士団なんかに入ったらさ、俺達一生出会えなかったよ。それどころか、ルリシヤは俺達みたいな奴を見下した目で見てたかもしれない。でも今ルリシヤは、俺の隣にいるだろ。だから良かった。俺はそう思うよ」

「…グリーシュ…」

良かった…良かった、か。

確かに…そうかもしれないな。

帝国騎士官学校なんかに入って…その後、帝国騎士団に入っても。

俺はきっと、今よりずっと世間知らずだったに違いない。

孤児院に入って、グリーシュと知り合って、ルティス帝国の裏社会の一端に触れて…俺の視野は、驚くほどに広がった。

今まで俺は、帝国騎士になることしか頭になかった。それ以外の選択肢がなかったから。

なんて狭い視野をしていたことだろうと、今では思う。

俺はここに来て、文字通り世界が開けたのだ。

だから、自分の過去を辛いものだったとは思わない。

「俺も良かったと思ってるよ。…そのお陰で、グリーシュに会えたしな」

「おいおい、口説いてるのか?俺はそんな趣味はないぞ?」

「お前が先に言ったんだろ?」

そんな下らない会話をして、笑い合う。

あのときの俺にとっては、なんて幸せな日々だったことだろう。

そして今の俺にとっては、なんて儚い日々だったことだろう。