それ以来、俺はグリーシュと共にあった。
同年代の友達なんて、今まで一人もいなかったというのに…俺とグリーシュは、妙に気が合った。
二人で組めば、賭け事も負けなしだった。
そう…ルレイア、お前とルルシーのような関係だったんだ。
俺はグリーシュに心を許した。だから、他の人間には絶対に話すまいと誓っていた自分の出自のことも、彼にだけは話した。
グリーシュは、俺の告白を黙って聞いてくれた。
「…そうか。何と言うか…色々大変だったんだな」
「…そうだな」
真夜中。
俺とグリーシュは孤児院を抜け出して、空き地のガラクタ置き場に、二人で腰掛けていた。
最近の俺達は、こうして夜になると孤児院を抜け出して、好きなところに遊びに行っている。
俺達だけじゃない。孤児院では、ある程度の年齢になればほとんどの子供がそうしていた。
夜遊び、って奴だ。
賭場にも出入りしていたし、俺達二人はその界隈ではそこそこ有名人だった。
俺はその夜、グリーシュに自分の話をした。
孤児院では、互いの過去を詮索しないのが暗黙の了解のようになっている。
引き取り手がなく孤児院に来るような子供だ。皆、およそ愉快とは言いがたい経歴を持っている者が大半だった。
だから、互いの過去を聞き合うようなことはしない。
聞くとしたら、それは本人が語りたくて語ったときだけだ。
今の俺のように。
「ルリシヤはさ…字も書けるし頭良いから、ちゃんと教育受けてるんだろうなーとは思ってたけど…へへ、そうか。元貴族だったんだ。成程なぁ…ちょっと納得」
「…」
「にしても、元貴族の坊っちゃんが、今や賭場で大人達を泣かせてるんだもんなぁ。ルリシヤの兄ちゃん、こんなこと知ったら笑うだろうな」
「…あぁ」
俺の堕落ぶりに、手を叩いて喜ぶことだろう。
俺は今や、正義の帝国騎士とは正反対のことをしている。
孤児院にいれば、それは仕方ない。孤児院出身というだけで、俺達は表社会で生きにくい生活を強いられるのだから。
「でも、俺にとっては良かったよ。ルリシヤが家を追放されて良かった」
「…え?」
良かった、だって?
「あぁ、怒らないでくれよ。そういう意味じゃないから…。お前が不幸になったことを喜んでるんじゃない。そうじゃなくてさ…そのお陰で、会えただろ?俺達」
「…それは」
「帝国騎士官学校なんかに行って、帝国騎士団なんかに入ったらさ、俺達一生出会えなかったよ。それどころか、ルリシヤは俺達みたいな奴を見下した目で見てたかもしれない。でも今ルリシヤは、俺の隣にいるだろ。だから良かった。俺はそう思うよ」
「…グリーシュ…」
良かった…良かった、か。
確かに…そうかもしれないな。
帝国騎士官学校なんかに入って…その後、帝国騎士団に入っても。
俺はきっと、今よりずっと世間知らずだったに違いない。
孤児院に入って、グリーシュと知り合って、ルティス帝国の裏社会の一端に触れて…俺の視野は、驚くほどに広がった。
今まで俺は、帝国騎士になることしか頭になかった。それ以外の選択肢がなかったから。
なんて狭い視野をしていたことだろうと、今では思う。
俺はここに来て、文字通り世界が開けたのだ。
だから、自分の過去を辛いものだったとは思わない。
「俺も良かったと思ってるよ。…そのお陰で、グリーシュに会えたしな」
「おいおい、口説いてるのか?俺はそんな趣味はないぞ?」
「お前が先に言ったんだろ?」
そんな下らない会話をして、笑い合う。
あのときの俺にとっては、なんて幸せな日々だったことだろう。
そして今の俺にとっては、なんて儚い日々だったことだろう。
同年代の友達なんて、今まで一人もいなかったというのに…俺とグリーシュは、妙に気が合った。
二人で組めば、賭け事も負けなしだった。
そう…ルレイア、お前とルルシーのような関係だったんだ。
俺はグリーシュに心を許した。だから、他の人間には絶対に話すまいと誓っていた自分の出自のことも、彼にだけは話した。
グリーシュは、俺の告白を黙って聞いてくれた。
「…そうか。何と言うか…色々大変だったんだな」
「…そうだな」
真夜中。
俺とグリーシュは孤児院を抜け出して、空き地のガラクタ置き場に、二人で腰掛けていた。
最近の俺達は、こうして夜になると孤児院を抜け出して、好きなところに遊びに行っている。
俺達だけじゃない。孤児院では、ある程度の年齢になればほとんどの子供がそうしていた。
夜遊び、って奴だ。
賭場にも出入りしていたし、俺達二人はその界隈ではそこそこ有名人だった。
俺はその夜、グリーシュに自分の話をした。
孤児院では、互いの過去を詮索しないのが暗黙の了解のようになっている。
引き取り手がなく孤児院に来るような子供だ。皆、およそ愉快とは言いがたい経歴を持っている者が大半だった。
だから、互いの過去を聞き合うようなことはしない。
聞くとしたら、それは本人が語りたくて語ったときだけだ。
今の俺のように。
「ルリシヤはさ…字も書けるし頭良いから、ちゃんと教育受けてるんだろうなーとは思ってたけど…へへ、そうか。元貴族だったんだ。成程なぁ…ちょっと納得」
「…」
「にしても、元貴族の坊っちゃんが、今や賭場で大人達を泣かせてるんだもんなぁ。ルリシヤの兄ちゃん、こんなこと知ったら笑うだろうな」
「…あぁ」
俺の堕落ぶりに、手を叩いて喜ぶことだろう。
俺は今や、正義の帝国騎士とは正反対のことをしている。
孤児院にいれば、それは仕方ない。孤児院出身というだけで、俺達は表社会で生きにくい生活を強いられるのだから。
「でも、俺にとっては良かったよ。ルリシヤが家を追放されて良かった」
「…え?」
良かった、だって?
「あぁ、怒らないでくれよ。そういう意味じゃないから…。お前が不幸になったことを喜んでるんじゃない。そうじゃなくてさ…そのお陰で、会えただろ?俺達」
「…それは」
「帝国騎士官学校なんかに行って、帝国騎士団なんかに入ったらさ、俺達一生出会えなかったよ。それどころか、ルリシヤは俺達みたいな奴を見下した目で見てたかもしれない。でも今ルリシヤは、俺の隣にいるだろ。だから良かった。俺はそう思うよ」
「…グリーシュ…」
良かった…良かった、か。
確かに…そうかもしれないな。
帝国騎士官学校なんかに入って…その後、帝国騎士団に入っても。
俺はきっと、今よりずっと世間知らずだったに違いない。
孤児院に入って、グリーシュと知り合って、ルティス帝国の裏社会の一端に触れて…俺の視野は、驚くほどに広がった。
今まで俺は、帝国騎士になることしか頭になかった。それ以外の選択肢がなかったから。
なんて狭い視野をしていたことだろうと、今では思う。
俺はここに来て、文字通り世界が開けたのだ。
だから、自分の過去を辛いものだったとは思わない。
「俺も良かったと思ってるよ。…そのお陰で、グリーシュに会えたしな」
「おいおい、口説いてるのか?俺はそんな趣味はないぞ?」
「お前が先に言ったんだろ?」
そんな下らない会話をして、笑い合う。
あのときの俺にとっては、なんて幸せな日々だったことだろう。
そして今の俺にとっては、なんて儚い日々だったことだろう。


