『青薔薇解放戦線』。
それが、俺の作った組織の名前である。
少々奇抜な名前であるが、これはかつて読んだ伝記の英雄にあやかってつけたものだ。
この名前なら…かの英雄のように、不可能を希望に変えることが出来るのではないかと思ったのだ。
俺は組織を作り、そして仲間を集めた。
国内には、箱庭帝国のやり方に反対する地下組織が僅かながらも存在していた。
彼らに声をかけ、一つの組織にまとめ上げた。
その苦労は並大抵のものではなかった。
当然のことながら、父を始めとして、憲兵局に嗅ぎ付けられる訳にはいかない。
それに、密告者の存在も脅威だった。
いつ、誰が俺のやっていることに気づいて、密告してもおかしくなかった。
ましてや俺は、憲兵局参謀長官の息子。俺が何を訴えようと、始めは誰も信じてくれなかった。
それでも、俺は諦めなかった。
少しずつ、少しずつ信頼を獲得した。そして気づけば…『青薔薇解放戦線』は、国内最大規模の反社会組織になっていた。
憲兵局の権威の象徴であった我が家の邸宅は、今では思想犯の穴ぐらであった。
俺にそんなことが出来たのは、俺がこの家の当主であったからだ。
憲兵局参謀長官であり、この家の当主であった父は、五年前、病気で亡くなった。
長年の不摂生な生活が祟ったのだ。
あれだけ毎日、暴飲暴食を繰り返していれば病気にもなる。
この国で、あんな病気で死ねる人間はほんの一握りだ。
ともあれ、父が亡くなったのは…こんな言い方はしたくないが、有り難いことではあった。
俺の野望にとっては。
父がいなくなったから、俺はこの家と財産を、好きなように使うことが出来た。
俺は憲兵局に隠れて、この家を思想犯の巣窟にした。
ここで、憲兵局を倒す為の力を…蓄えていったのだ。
…しかし、充分ではない。
俺が作った『青薔薇解放戦線』は、国内の反社会組織としては相当な規模だ。
でも、この程度の組織では…憲兵局の敵ではない。
俺達はまだ、あの『シュレディンガーの猫』ほどの力さえ持っていないのだから。
『青薔薇解放戦線』はマフィアではない。
戦おうにも、武器もなければ資金もない。人手も少ない。
憲兵局に逆らおうとする人間は、元々国内にそう多くはないのだ。
憲兵局の徹底した洗脳教育の賜物だ。
この国に生まれた者は、幼い頃から憲兵局に搾取されるのが当然だと刷り込まれる。
だから、逆らおうなんて思わない。
逆らえば死が待っていることを、国民の誰もが知っている。
その上で逆らおうとする俺達は、相当の馬鹿者だ。
人員不足もさることながら、資金不足も深刻だった。
我が家には父が蓄えてきた財産があるが、その財産だって無限にある訳ではない。
これ以上『解放戦線』を大きくしたいのなら、更なる資金源を作らなければならない。
何より、俺達には協力者が不足しているのだ。
俺は自分の力の限界を知っていた。
この国でいくら頑張っても、憲兵局に対抗する力を得ることは出来ない。
俺達には、強力な後ろ楯が必要だ。俺達を支えてくれる存在が。
じゃあ、それは誰なのか。誰が、俺達を助けられるのか。
考えた俺は、特に信頼のおける部下を数人、国外に送り出した。
国内に、俺達に協力出来る者はいない。
そう判断したからだ。
…彼女も同意見だった。
『青薔薇解放戦線』は、これ以上国内に留まっていてはいけない。
憲兵局から隠れ続けることは出来ない。いずれ、俺達の存在は奴等に露見する。
だから、その前に。
「…」
一歩を踏み出すのだ。未知の国へ。
それが、俺の作った組織の名前である。
少々奇抜な名前であるが、これはかつて読んだ伝記の英雄にあやかってつけたものだ。
この名前なら…かの英雄のように、不可能を希望に変えることが出来るのではないかと思ったのだ。
俺は組織を作り、そして仲間を集めた。
国内には、箱庭帝国のやり方に反対する地下組織が僅かながらも存在していた。
彼らに声をかけ、一つの組織にまとめ上げた。
その苦労は並大抵のものではなかった。
当然のことながら、父を始めとして、憲兵局に嗅ぎ付けられる訳にはいかない。
それに、密告者の存在も脅威だった。
いつ、誰が俺のやっていることに気づいて、密告してもおかしくなかった。
ましてや俺は、憲兵局参謀長官の息子。俺が何を訴えようと、始めは誰も信じてくれなかった。
それでも、俺は諦めなかった。
少しずつ、少しずつ信頼を獲得した。そして気づけば…『青薔薇解放戦線』は、国内最大規模の反社会組織になっていた。
憲兵局の権威の象徴であった我が家の邸宅は、今では思想犯の穴ぐらであった。
俺にそんなことが出来たのは、俺がこの家の当主であったからだ。
憲兵局参謀長官であり、この家の当主であった父は、五年前、病気で亡くなった。
長年の不摂生な生活が祟ったのだ。
あれだけ毎日、暴飲暴食を繰り返していれば病気にもなる。
この国で、あんな病気で死ねる人間はほんの一握りだ。
ともあれ、父が亡くなったのは…こんな言い方はしたくないが、有り難いことではあった。
俺の野望にとっては。
父がいなくなったから、俺はこの家と財産を、好きなように使うことが出来た。
俺は憲兵局に隠れて、この家を思想犯の巣窟にした。
ここで、憲兵局を倒す為の力を…蓄えていったのだ。
…しかし、充分ではない。
俺が作った『青薔薇解放戦線』は、国内の反社会組織としては相当な規模だ。
でも、この程度の組織では…憲兵局の敵ではない。
俺達はまだ、あの『シュレディンガーの猫』ほどの力さえ持っていないのだから。
『青薔薇解放戦線』はマフィアではない。
戦おうにも、武器もなければ資金もない。人手も少ない。
憲兵局に逆らおうとする人間は、元々国内にそう多くはないのだ。
憲兵局の徹底した洗脳教育の賜物だ。
この国に生まれた者は、幼い頃から憲兵局に搾取されるのが当然だと刷り込まれる。
だから、逆らおうなんて思わない。
逆らえば死が待っていることを、国民の誰もが知っている。
その上で逆らおうとする俺達は、相当の馬鹿者だ。
人員不足もさることながら、資金不足も深刻だった。
我が家には父が蓄えてきた財産があるが、その財産だって無限にある訳ではない。
これ以上『解放戦線』を大きくしたいのなら、更なる資金源を作らなければならない。
何より、俺達には協力者が不足しているのだ。
俺は自分の力の限界を知っていた。
この国でいくら頑張っても、憲兵局に対抗する力を得ることは出来ない。
俺達には、強力な後ろ楯が必要だ。俺達を支えてくれる存在が。
じゃあ、それは誰なのか。誰が、俺達を助けられるのか。
考えた俺は、特に信頼のおける部下を数人、国外に送り出した。
国内に、俺達に協力出来る者はいない。
そう判断したからだ。
…彼女も同意見だった。
『青薔薇解放戦線』は、これ以上国内に留まっていてはいけない。
憲兵局から隠れ続けることは出来ない。いずれ、俺達の存在は奴等に露見する。
だから、その前に。
「…」
一歩を踏み出すのだ。未知の国へ。


