「…やっぱり、おかしい」
「…若旦那様…」
その日も俺は、トミトゥから庶民の話を聞いて、そう思った。
何で、彼女達は…病気や怪我を患ったくらいで、配給券を止められなければならないのか。
配給券を止められたら、この国では生きていけない。
死ね、と言っていると同じだ。
国の為に働いて傷ついた者に、何故報いてやらないのか。
こんなことは、間違ってる。
「若旦那様…。そのようなこと、決して旦那様には話してはいけませんよ」
「…」
トミトゥに言われるまでもなかった。
俺の父は根っからの憲兵局員。箱庭帝国主義の人間だ。
箱庭帝国のやり方が間違ってるなんて言おうものなら、ぼこぼこに殴られるだろう。
でも、今ここに父はいない。
「…誰かが、正義を行わなければならないんだ」
俺は、こっそり持ち出したあの伝記を思い出した。
間違ってることを、間違ってると言えない国に、未来はない。
誰かが、正さなければならないのだ。
あの伝記の、英雄のように。
「若旦那様…。そんな、危険なことを…」
「分かってる。分かってるけど…でも」
このままで良いはずがないのだ。
この国に蔓延る理不尽と不平等を一掃しなければ。
人間である限り、誰でも持っている権利を…幸せになる権利を…誰もが享受しうる国にしなければ。
トミトゥのような弱者は、永遠に救われない。
「このままで良いはずがないんだ」
「…」
…だからと言って、俺に何が出来るだろう。
十歳かそこらの子供に。
俺がいくら正義を訴えたところで…誰が俺の声なんて、聞いてくれるだろう。
自分の父さえ怖がって、何も言えないのに。
「誰かが…。いつか誰かが、声をあげないと…」
いつか。誰かが。
あのときの俺は、愚かだった。
いつか誰かが、この国を救ってくれることを期待していた。
正義を為す人が、いつか生まれてくれることを。
あの伝記の英雄のような人が、いつか出てくることを。
それが大きな間違いであることに、気づいていなかった。
「…若旦那様…」
その日も俺は、トミトゥから庶民の話を聞いて、そう思った。
何で、彼女達は…病気や怪我を患ったくらいで、配給券を止められなければならないのか。
配給券を止められたら、この国では生きていけない。
死ね、と言っていると同じだ。
国の為に働いて傷ついた者に、何故報いてやらないのか。
こんなことは、間違ってる。
「若旦那様…。そのようなこと、決して旦那様には話してはいけませんよ」
「…」
トミトゥに言われるまでもなかった。
俺の父は根っからの憲兵局員。箱庭帝国主義の人間だ。
箱庭帝国のやり方が間違ってるなんて言おうものなら、ぼこぼこに殴られるだろう。
でも、今ここに父はいない。
「…誰かが、正義を行わなければならないんだ」
俺は、こっそり持ち出したあの伝記を思い出した。
間違ってることを、間違ってると言えない国に、未来はない。
誰かが、正さなければならないのだ。
あの伝記の、英雄のように。
「若旦那様…。そんな、危険なことを…」
「分かってる。分かってるけど…でも」
このままで良いはずがないのだ。
この国に蔓延る理不尽と不平等を一掃しなければ。
人間である限り、誰でも持っている権利を…幸せになる権利を…誰もが享受しうる国にしなければ。
トミトゥのような弱者は、永遠に救われない。
「このままで良いはずがないんだ」
「…」
…だからと言って、俺に何が出来るだろう。
十歳かそこらの子供に。
俺がいくら正義を訴えたところで…誰が俺の声なんて、聞いてくれるだろう。
自分の父さえ怖がって、何も言えないのに。
「誰かが…。いつか誰かが、声をあげないと…」
いつか。誰かが。
あのときの俺は、愚かだった。
いつか誰かが、この国を救ってくれることを期待していた。
正義を為す人が、いつか生まれてくれることを。
あの伝記の英雄のような人が、いつか出てくることを。
それが大きな間違いであることに、気づいていなかった。


