The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

ある日、上司であるルルシーさんのもとに、頼まれていた書類を持っていったときのこと。

「見てくださいよルルシー。素敵でしょ?」

「あ?うん…どうしたんだ?それ」

ルルシーさんの執務室には、今日も当たり前のように、ルレイアさんが来ていた。

そのルレイアさんが、ルルシーさんに、自分の指を見せていた。

何だろうなぁと思ってよく見ると、ルレイアさんの右手の薬指に、きらきら光る指輪がはめられていた。

しかも彼がはめていたのは、何カラットもする大粒のダイヤモンド…なんて、ルレイアさんには似つかわしくない代物ではなかった。

全身黒ずくめのルレイアさんに相応しい、真っ黒のダイヤモンドの指輪。

ダイヤまで黒とは…。さすがルレイアさん。恐れ入る。

「買ったのか?」

「とんでもない!最近落とした、金持ちの実業家の奥様にちょっと『おねだり』して、買ってもらいました」

うふふ、と妖艶に笑うルレイアさん。

つまり、いつものハーレムの会員に貢がせたと…そういうことか。

おぉ、怖。俺にはとても真似出来ない。

「素敵でしょう?ね、ルヴィアさん?」

「え?あ、はい…とても」

いきなり俺に話を振ってきたので、慌ててしまった。

確かにブラックダイヤは素敵だけれども…。でもそれが似合うのは、ルレイアさんだからこそだ。

同じものを俺がつけたとしても、全く似合わないどころか、ダイヤに失礼だろう。

「済まんな、ルヴィア…。ルレイアがアホで…」

ルルシーさんは、申し訳なさそうに溜め息をついた。

「いえ、とんでもない…」

ルレイアさんには、フューニャのことでお世話になったし…。

「そういえばルヴィアさんは、既婚者なのに結婚指輪はつけてないんですねぇ。何でなんですか?」

俺の左手を見ながら、ルレイアさんがそう言った。

え?結婚指輪?

「指輪つける主義じゃないんですか?」

「いえ…そういう訳ではないですけど」

考えたこともなかった。結婚指輪なんて。

そういえば俺とフューニャは、知り合ってから割とすぐに結婚したし…。結婚前後は、フューニャの戸籍のことやら何やらで、指輪のことまで頭が回らなかった。

フューニャも何も言わなかったし…。

「買ってないんです。指輪…」

「えぇ~?買ってないんですか?勿体ない」

「…やっぱり、あった方が良いんでしょうか?」

今からだと…ちと遅い気もするが。

「そりゃ婚約指輪、結婚指輪は女性の夢ですからね。お宅は婚約期間がなかったんでしょうから、婚約指輪はなしとしても…。そのぶん結婚指輪に力を入れても良いと思いますよ」

…確かに。

思えばフューニャは、アクセサリーの類をろくに持っていないじゃないか。

「それに、恋人との絆を確認する為にも…やっぱり愛の証って必要ですよね。ねぇルルシー?」

「…俺の方を見て言うな。ルヴィアに言え」

ルレイアさんに見つめられ、ルルシーさんは露骨に顔を背けていた。

「そんな訳で俺達も…そろそろ婚約指輪を」

「買わない」

「いけず~!」

「引っ付くな!」

あぁ…。今日も仲良いなぁ、ルレイアさんとルルシーさん。

「ラブラブのお二人を邪魔するのも無粋なので、俺はこれで失礼しますね」

「はーい!お気遣いありがとうございます」

「おい、ちょっと待てルヴィア!ラブラブなのはお前らだろ!ちがっ…。離れろルレイア!」

仲良さそうな声を聞き、微笑ましいなぁ、と思いながら…俺は上司の執務室を後にした。