「結、好きだ。俺はもう、結しかいない。全部、全部好きだよ。」
 ストレートな言葉にぐっと心がつかまれる。
 …顔が熱い。
 こんなの返事は決まっている。
 不愛想と勘違いされやすいけど本当は不器用なだけで優しくて強くてかっこよくて。
 そんな仁さんが好き。
「私も仁さんが好きですっ。」
 泣きそうだけどそんなのどうでもいい。
「付き合ってくれる?」
 そんな、うれしすぎるよっ。
「もちろんっ‼」
 仁さんが自分のほうへと私を引き寄せてぎゅっと抱きしめてくれた。
 …幸せだなっ。
「ちょっとそこの二人、イチャイチャしないでよね。」
 陸さんの言葉に周りの人たちもうなづく。
 そ、そういえば見られてたんだった。…は、はずかしいっ。
 仁さんは不機嫌になりながらも「じゃあ、続きは俺の部屋でなっ」と私にささやいてきてもっと顔が真っ赤になってしまう。



「もう、俺の結ちゃんだったのに。」
「いや、お前のじゃないから。一応俺の。」
 陸さんと類さんのやり取りに苦笑いをしながら仁さんがこういった。
「は?俺のだろ。勝手にお前らのにするな。」
 仁さんの言葉にみんながどっと笑う。
「はは、仁、機嫌悪すぎてっ…。ダサいっ…。」
「…本音は隠せ。」
「仁、シンプルにきもい。」
「…だまれ。」
 このやり取り、もう何回目だろう…。
 みんな、すごく仲良った気がするなっ。
「じゃあ、これからは俺と結の時間なんで。結、行くよ。」
 仁さんは玄関のほうへと歩いていく。
 私は陸さんと類さんにお辞儀をする。
「失礼しますっ。」
 私は仁さんを追いかける。となりの仁さんの部屋に入って仁さんが途端に抱きしめてきた。
「本当に可愛すぎてやばい。これからはいつでも抱きしめていい?」
 上目づかいで見てくる仁さんは可愛すぎて、うなづくことしかできなくなる。
 仁さんはそのまま私のあごに手を添えて、くいっと持ち上げられて視線が絡み合う。
 仁さんの顔がだんだんと近づいてきて私は目をつぶる。
 私のくちびるに温かくてやわらかいものが押し付けられた。
 長く感じたり短く感じる初めてのキスはとても幸せな感じだった。
「結、俺にもして。」
 そういって仁さんは自分のほうをつんつんとついている。
 そ、そんな恥ずかしいこと…。
 ためらっているうちに仁さんがこっちを向いて「遅い」といってキスをしてきた。さっきよりも長く、苦しいくらい強引なキスだった。
 ゆっくり目を開けると目に熱を帯びた仁さんと目が合う。
 これ、もう仁さんのことしか考えられなくなってしまうっ。
 そして名残惜しそうに離れて行ったくちびる。
「ふふっ、可愛い。」
 そういってまたくちびるを重ねあった。