結と別れた後、俺たちはノヴァのグループで集合した後、廃墟の公園へと向かった。
 今日は正々堂々とした全面戦争だ。
 ようやく公園が見えてきたとき、たくさんの人影が見えた。俺たちノヴァは大体二十人くらい。フォースは大体五十人くらいか…。
 圧倒的にフォースのほうが多いけど負ける気はない。
 勝って結にこの思いを伝える。
「よう。遅かったな、…ノヴァ。」
 その中のいかにも一番目立っている総長らしき人が言った。
 金髪でピアスを五、六個開けている。
「ずりーぞ、武器なんて。」
 フォースのメンバーが持っているのはスタンガンや鉄の棒。
 やる気満々すぎて笑える。
「武器はなしとか聞いてないけどなぁ。お前らと違ってこっちは人数も武器も多いんだよっ。」
 正直、勝てるかはわからない。けど負けるなんて絶対に許されない。
「そうか、なら仕方ない。フォースの総長さん、いやトップ?」
 俺が挑発するように言うと「はっ?」と言う混乱の声が聞こえてきた。
 ふっ、計画通り。こいつはトップ。俺はトップの座を狙っていたから手間が省けた。
「ノヴァとフォースの決着、トップの座をかけて勝負だ。」
 総長はニヤッと不敵な笑みを浮かべた。
「…上等だ。」
 その言葉を合図にフォースの下っ端がこっちに向かって走ってきた。同時にノヴァもフォースに向かって走り出す。
 蹴りを入れたり殴り合ったり…正直勝てる確率は少ない。
 周りからノヴァたちのうめき声が聞こえてくる。
 俺はとっさに周りを見渡すと俺らのグループでもフォースのグループでもない奴が転がっていた。陸も類ももう限界が近そうだ。
 はあ、部外者も巻き込むなんて飛んだ大バカもんだなっ。
「はあ、はあ…」
「あれ?もう息切れかな?まあこんな勝負、すぐに決着がつくしね。」
 俺は正直もう限界だった。
 重い体をうごかして敵を倒していく。
 この勝負、負けかもな…。

―――ドンっ

 公園の入り口のほうで大きな音が聞こえた。
「ノヴァのみなさんっ、無事ですかっ?」
 聞こえたのは聞きなれた声。まさか…
 声のほうを向くと予想通り―――結が立っていた。
 その服には〝オーブ〟と書かれている。しかも結が総長の服を着ているっ。ということは…
「ごめんなさいっ仁さん。私、オーブの総長なんですっ。約束守れなくてごめんなさいっ。」
 必死に謝りに来てくれる結を見て俺は少し余裕ができた。
 陸も類も結の姿を見て安心したかのようにしている。
「俺こそごめん。こんな情けない姿を見せて。一緒に戦ってくれるのか?」
「もちろんっ!」
 結は当然のように天使のような笑顔を向けて俺は自分がもっと情けなくなった。
 俺は…俺たちは結がいるならもう無敵。
「正直、勝てるヨユーしかねぇーんだけどっ‼」
 俺たちのノヴァと結のオーブの二つが一斉になって戦う。
 結のことをちらっと見ると一つも無駄な動きがなく、しなやかに動いていて綺麗な戦い方だった。
「お、おいっ。そんなのずるだろっ。」
 そう必死に声を上げながら戦う総長。あきらかに戦い方も雑になったしそうとう混乱しているんだろう。
「ほかの組織の応援が来たらだめなんてルールになかったけど?」
 俺は総長に詰め寄って胸ぐらをつかむ。
「俺はお前がしたこと、ぜってーに許さねぇ。このまま病院送りになりたくなかったら今から消えろ。」
 脅しの言葉が聞いたのか顔を真っ赤にして「フォース、撤収だっ。」と声をかけて行ってしまった。
 もっと喧嘩するつもりだったのに脅しに弱すぎだろ、あいつ。
「仁さんっ。」
 後ろには小走りで駆け寄ってくる可愛い結。
 そのまま俺の胸に飛び込んでくる。俺は疲れ切った体で何とか結を支える。
「仁さん、ごめんなさい。ずっと総長だということを隠していて。それに約束のことも…」
「だからもういいって言ってるだろ。ったく。可愛すぎるだろ…。」
 助けに来てくれたのにそれでも約束のことを謝るなんてどれだけお人よしなんだよ。
 はあ、じゃああの約束、俺も守らないとな。
「結。俺がした約束覚えてるか?」
「ええっと」
 必死に思い出そうとしている顔が愛しくてたまらない。
「告白するって。」
 俺が答え合わせをすると結は思い出したようで顔を真っ赤にしていた。
 全部が可愛くて愛しいなんて反則過ぎるだろっ。
「結、好きだ。俺はもう結しかいない。全部、全部好きだよ。」