絶対落ちないきみが好き


「違いが分からないんだけど」

「へ?」

「前髪。普段と今日、何が違うのかいまいちよく分かんない」

「え……、ええ!」

驚きのあまり、唯澄くんの腕から手を離した。

あたふたと両手を騒がしく動かしながら「意地悪で言ってるだけだよね……?」と問いかけるけど、返ってきた言葉は「いや、本気で」だった。

「ねえ! よーく見て?」

「……」

「このくるっとした前髪が、いつもは綺麗に揃ってるの!」

「うん」

「今は少し動いただけですぐにバラバラになっちゃう」

「うん」

「かわいくないでしょ?」

「別に」

「えっ! じゃあかわいい?」

「普通」

「じゃあいつもは? ちゃんとかわいい?」

「普通」

「がーーーーーーーん」


私の日々の努力はあまり意味のないものだったらしい。 

いや、別に、元々自己満でしていたことだし、いいんだけどね。毎朝の化粧も、ヘアセットも、いつ唯澄くんに触れられてもいいように全身しっかり保湿していることも、ただの自己満だからいいんだけどね。

唯澄くんが「かわいい」なんて言ってくれるはずがないことも分かっていたし。いいんだけどね!