「そんなに落ち込むことだよ〜〜〜!」
「へえ」
「もう今すぐにでもおうちに帰りたいくらい……」
「ばいばい。また明日ね」
「あ、え、ちょっと唯澄くん…!」
くるりと背を向けて、あっさり立ち去ろうとした唯澄くんの腕を思いっきり掴んだ。
「……なんだよ。家に帰るんでしょ」
「ちがうちがう。おうちに帰りたいくらい落ち込んでるってこと!」
「はいはい。悲しいね」
唯澄くんの表情も声のトーンも、全くもって悲しそうじゃない。完全にあしらわれている。
「お気に入りの傘をコンビニで盗まれちゃった時より悲しい」
「……」
「小学生の時、作った紙粘土の貯金箱を弟に壊された時より悲しい」
「どんだけだよ」
呆れたように無表情を極めていた唯澄くんの口元が、僅かに上がった。
調子に乗った私は、唯澄くんの腕を掴んだまま距離を少しだけ縮める。
「唯澄くんには常にかわいい状態で会いたいの。大好きな唯澄くんに少しでもかわいいって思ってほしいから、毎日頑張ってるんだもん!」
少し語尾を強めて見上げる。高い位置から私を見下ろす唯澄くんは、私の顔をじいっと凝視したのち、こてんと首を傾けた。


