「あれ? 唯澄くん、もしかして昨日あんまり寝てない?」

「……なんで」

「いつもより瞼が3ミリくらい開いてないから、眠いのかなあって」

「……」 

「あ~その顔は図星だ~!」


煩わしそうに眉を顰めた唯澄くんは私から目を逸らすと、スタスタと歩くスピードを速めた。駆け足で唯澄くんの隣に並び直して、どんよりと曇った最強顔面を覗き込む。


「夜更かししてたの?」

「ゲーム」

「え~なんのゲーム?」

「綾崎さんに言っても分からないよ」

「分かるかもしれないじゃん!」

「綾崎さんはゲームなんてしないでしょ」

「これからするもん! 唯澄くんと同じゲーム、私もやりたい!」

「サザンクロススーパーソードエンドレスファイヤー」

「えっ?サ、サザン、エン……ごめん、もう一回!」

「一回しか言わない」


抑揚のない声を落とす唯澄くんは自分の下駄箱へと向かって足を進める。

クラスが別々の私と唯澄くんの下駄箱は、非常に残念なことに離れている。私も急いで自分の下駄箱へと向かい、クラスメイトと「おはよう」を交わしながら上履きへと履き替える。