隠れ執着外交官は「生憎、俺は諦めが悪い」とママとベビーを愛し離さない

 真司さんはとても優しくて、細々と私に気を配ってくれる。知らない土地で私が孤立してしまうことを心配していたようだ。

 私も不安がなかったわけじゃないが、大使夫人が積極的に声を掛けてくださったおかげで気鬱にならずに済んだ。

 もちろん彼の存在があってこそ。

 最初の頃は休みの日になると、必ず私を誘って観光や食事に連れ出してくれたりして、
 いつの間にか本当の家族だと違和感なく思える。

 相変わらずキスすらしないけれど、だからこそ安心できたりする。
 もしこれ以上の関係になったら、好きという感情が恋愛感情に変わってしまいそうで……。

 そうなるのが私は怖い。

 恋愛経験がないからかもしれないが、自分がどうなってしまうのか想像ができない。手を繋いだだけでドキドキする今の関係がちょうどいいのだ。

「ここにするか」

 湖の近くの芝生にシートを広げた。