隠れ執着外交官は「生憎、俺は諦めが悪い」とママとベビーを愛し離さない

 夜なのでよくわからないが、そう遠くまでは行かずにタクシーは止まった。

 高層ではないが、コンシェルジュがいる重厚な造りのマンションだ。

「さあどうぞ」

「おじゃまします」

 うわ。こ、これは……。

 部屋に入って驚いた。どう考えても単身者向けではない。

 部屋はマンションの二階。広々とした空間で、リビングにはベビーベッドがあった。

 唖然としていると真司さんが照れたように笑う。

「先走ってしまって」

 どう言ったものか困り、ほろ苦い笑みが浮かぶ。

「真司さん、日本に帰ってきたばかり、なんですよね?」

 ここは本当に彼の新しい家なのか。

「実は今日家具が揃ったばかりなんだ」

 ファミレスで会ったあの日の朝に帰国したと聞いたはずだ。指折り数えても、あれからまだ三日しか経っていない。

「えっと……たった三日の間に部屋を決めて、これだけの家具を揃えたんですか?」

 彼は気まずそうに頷いた後、振り切ったように笑顔を向ける。

「君の部屋もあるんだ。見てみないか?」