切恋memory

待ちに待った修学旅行。

私は、バスの座席で

君が好きな人について尋ねてくる時を待った。



「好きな人がいる人~」



道中、バスガイドさんが

みんなに質問をした。

私は、そっと手を伸ばす。

……もちろん、檎人くんも。

他にも、私と同じ気持ちを抱いている人が

大勢いた。

それは、好きな人がいないほうが

少ないほど。



「あら、みんな正直に挙げてくれて……。もうすぐ右に縁結びの神社が見えるから、お願いするといいよ~」



私は、強く願った。

檎人くんに告白できますように……。





「……で、誰?」

君は何度か候補の人の名前を挙げると、

諦めたように聞いてきた。



「目の前」



あらかじめ決めておいた

この言葉が、

口をついて出てきた。

私は、

君からの返事を

ドキドキしながら待つ。



「……目の前? ……誰?」

「えぇ……わからない?」



私は、想いが届かないことを

もどかしく思った。



「だから、私の好きな人は目の前にいるよ」

「……えぇ? 森池?」

「違う……」

「多分通常ならわかるんだけど、今酔ってて頭回ってない」



そんな……。

檎人くんだって言ったら、

ほんとの告白みたいになっちゃうじゃん……。

あったはずの勇気は、

一瞬でしぼんだ。



「菖にお土産何買おうかな~」



そういえば、

気持ちの答えは出たのだろうか。

やっぱり、君の心にいるのは

菖ちゃんなのだろうか。