「だって彩も悪くないやん?
それに自分から巻き込まれに行ったのは俺やから。」
そう言って、俺は微笑んだ。
彩は何も悪くないんだと信じさせたくて。
「……ありがと…」
彩もさっきより少し笑顔が戻ったようだ。
彩の笑顔を見れば、俺はすぐに嬉しくなる。
単純過ぎる自分に呆れるけど、俺はそんな自分が好きだ。
「…うん、そっちの方がええな。」
「え?」
──真っ直ぐに直視して、ブレないように彩を瞳に映す。
「俺は“ごめん”より
“ありがとう”って言われる方が好きやねん。
…謝られるの、あんま好きじゃないからさ。」
「………」
……これは俺の信念でもあった。
もともと俺は謝られるのが好きじゃない。
謝られると、俺が悪い事をした気になるからだ。
──“ありがとう”──
お礼を言われるならこっちの方が嬉しい。
お礼を言うならこっちの方が伝わりやすい。
……少なくとも、俺はそう思って生きてきた。
多分、間違ってはいないはずだ。
「……ありがとう……」
彩は俯いた顔を上げて微笑んだ。
……あぁもう。
もう理性が壊れる。
そのうち自分が決壊するかも。
その微笑みは、俺の傷さえ癒やしてくれる万能薬。
……いや、今は理性を飛ばされそうだけど。
「……ちょっと待ってて?」
……………?
彩はそう俺に告げ、小走りで走って行った。



