──不自然なリズムを刻む心臓のお陰で、俺はまともに息を吸う事さえままならない。
「──…彩っ…!」
───チャリンッ!
「……っ」
慌てたせいか、持っていたキーケースを落としてしまった。
──あぁもうこんな時に!!
かがんでキーケースを拾った瞬間──…
─────ドンッ!
「………ってーなぁ!
オイコラァ!!!!」
────え?
入り口付近で聞こえてくる怒鳴り声に、俺はすぐ顔を上げた。
「謝れやコラァ!」
そう叫んでいる奴は、見るからに怖い顔をしたオヤジだった。
「謝れ言うてんの聞こえへんのかぁ?!?!」
そう怒鳴られて震えているのは彩だった。
多分あいつと運悪くぶつかってしまったんだろう。
彩は地面に転んだようで、がくがくと全身を震わしていた。
あいつ───…っ!
いくら何でも、あんな状態で怒鳴りつける事ないやろ!
相手は女やぞ?!
全身に怒りが込み上がり、気がつけば彩の元へと全力で駆け寄っていた。
「───きゃっ…!」
男が彩の胸ぐらを掴んで、握り拳を向ける。
彩の小さな悲鳴が俺の理性をぶち壊した。
「─────ゃっ…!」
────彩っ……!
必死で彩を抱き寄せ、俺の胸に引き寄せた。
「───…ふ……っ…」
頭を抱え、恐怖から小さく怯えて丸まる彩をギュッと抱き締めて。
───絶対守る。
守るから。
絶対傷つかしたりなんかせえへん──!
━━━バシッ!!



