「…これ…」
胸に、ザワザワとした黒い霧が一気に押し寄せる。
そこにあの日の記憶が舞い戻って来た。
『ちょっとでも彩がいらん素振りしたらお前がどうにでも処分して!!』
──────!
渡す時に叫んだ自分の言葉を思い出してハッと気づく。
──…あぁ…
そうか。
やっぱり…
「彩、いらんって?」
思い切って口に出し、
剥がれ落ちそうになる笑顔を守りながらそう聞くと──…
「───…いえ。
喜んでました。
ただ────……」
「……何や?」
明らかに小さくなった俺の声。
……聞きたくない…
「──やっぱり、
俺は朝岡さんから片方だけでも渡した方がいいと思ってこれだけ持って帰ってきました。」
「────は?」
そう言って、
ぶんは俺の手の平に、
そっとピアスを乗せた。



