壱との出逢いは数年前。
こいつがまだ中学生だった時のこと。
壱もまた、俺らと同じ大学を希望した為に春からこっちに越してきた。
「壱、ちゃんと戸締まりしてきたか?」
「うんっ!してきたよっ!ゴローちゃん、今日の朝飯うまかった♪」
壱はニコッと吾郎に笑顔を振り向いた。
──…壱と吾郎は一緒に住んでいる。
そもそも、吾郎が一人暮らしをしようとしていたのに、壱が『金がない』と泣き喚いたのが始まりだった。
泣きつく壱に、優しい吾郎はあっさり“ルームメート”承諾。
俺ならこんなバカ犬との生活は有り得ない。
……本当に吾郎は神様みたいな優しい奴だ。
「ほんなら出発すんで。」
「おっけーい♪」
壱の明るい声が車内に響き、俺はサイドブレーキを下げて車を動かした。
「…うっわ、今日ちょっと道混んでるかも?」
吾郎が憂鬱そうに行き先を見つめた。
「えーやだなー!」
「いけるやろ、だいぶ時間に余裕あるし。」
毎朝ごった返す通学路。
何だか知らないけど、
いつの間にかこのメンバーで毎朝通学するのが日課になっている。
電車の人混みが大嫌いな俺が車で通学するようにすると、吾郎も壱もセットで付いて来るようになった。
みんなで何気ない話をしながら通学っていうのも、そんなに悪くはない。



